悲しみはお腹を満たしてくれるものです。

みりん

第1話

人間は生涯の中で愛する人を2人見つけるらしい。

1人目は失う辛さを知るための愛。

2人目は永遠の愛を知るための愛。


なら、私が愛した彼は1人目の愛する人なんだろうか。


失う辛さを知るための愛は、その目的を嫌というほど遂行した。

涙が枯れたって消えない心の痛みは今も私の体の中を巡る。


辛いことや悲しいことがあると食欲が酷いくらいに沸かなくなるのは、悲しみはお腹を満たしてくれるものだからだ。

その悲しみを消化する術は時間の経過。ただそれだけ。


私は時間の経過を待つことすらが苦痛でままならなかったので、ただひたすら寝て、夢を見て、目を覚ましては時計を確認した。


あぁ、まだ2時間しか立っていない。

あぁ、まだ5時間しか立っていない。


悲しみはまったく、消化してくれない。

いつまでも飽きることなく私の心に溜まっていくだけ。



きっとこれからもずっとそうだろう。


例え、2人目の愛する人に出会えたとして、失った辛さは忘れない。

いつだって思うはず。いつだってきっと思い出す。


愛した人の笑顔、声、匂い、部屋、服、喋り方、癖、私への愛情表現も、ぜんぶ。


すべてが私の心に残ってる。



2人も愛してみたいだなんて贅沢は言わない。

私は1人で十分だ。あの人への愛だけで、私は満たされてしまうのに。





それでも、本当に愛する人を2人も見つけなければいけないなら、なぜ彼は2人目になってくれなかったの?



時計は明日に追いつかない。

追いつかないけれど、私はもう、おやすみなさい。










あぁやっぱり、しばらく


ご飯は食べられなさそう。


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悲しみはお腹を満たしてくれるものです。 みりん @noa_abc72712

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