第8話 エレナの思い


「お前が必要‥か‥」


この言葉がエレナの頭から離れない。


アイトは椅子に腰掛けたまま眠っている。


「アイトさん‥‥」


彼女は嬉しかった。


彼女はいままで誰にも必要とされたことがない。


それどころか、家族に捨てられたも同然の身だ。


そんなエレナに対して、アイトは、自分に必要な存在だ、1人にしないでくれ、と言った。


彼女はその言葉に心を打たれた。


と同時に、私のいるべき場所は彼の側だと確信した。


「アイトさんは私を必要としてくれた。私に居場所を与えてくれた‥。私もアイトさんに何か‥‥」


エレナは自分にできることは何かないかと考えた。


「私にできることは‥‥アイトさんを幸せにすること‥‥?」


幸せにしてあげたいという願望が真っ先に思い浮かんだ。


というより彼女にはこの願望以外、思いつかなかった。


「アイトさんは、家族を失ったばかり。私にはそれがどれだけ辛いか分かるはずよ。だから、彼には元気になってもらいたい。幸せになってもらいたい」


エレナは自分にそう言い聞かせた。

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