第9話 エレナのお遊び


誰かに肩を揺さぶれている感触だ。


「アイトさん、アイトさん、もうお昼ですよ。そろそろ起きましょうよ」


「ん‥ん? あっ‥え?」


「もう、寝ぼけてるんですか?お昼ですよ。そろそろ起きて買い物にでも行きましょうよ」


エレナに肩を揺さぶれて目を覚ましたアイトだった。


「お、おれ‥さっきまで何を‥‥」


「忘れちゃったんですか?私とあなたはある約束をしたんですよ」


約束と聞いてもイマイチ ピンとこない。


「私はあなたの側を離れない。 これで思い出しましたか?」


「‥‥‥‥‥‥‥‥あっ!!」


ようやく思い出したアイト。


顔は真っ赤になっていた。


「お、おれは年下の女に向かってなんて恥ずかしい‥‥」


「ちっとも恥ずかしくなんてありませんよ。あの言葉はアイトさんの心の声ですよね。人は精神的に追い込まれると本性をむき出しにすると聞いたことがあります」


「で、でも‥‥」


「あのときのアイトさん、と〜っても、可愛かったです」


アイトの顔は更に赤くなった。


「も、もうやめてくれ。た、頼むから」


「ふふっ♪わかりましたよ」


顔をうずめているアイトとは対照的にエレナは非常に楽しそうだった。






アイトは恥ずかしさのあまり部屋に閉じこもってしまった。


さすがにいじりすぎたと、少し反省するエレナだった。





「さぁ、買い物にでも行こうかな」


エレナはアイトを置いて買い物に出かけた。



数分後、アイトは部屋から出てきた。


「エレナにさんざんいじられたなぁ‥。情けない男だ、俺は」


まだ引きずっているようだ。


「でも、エレナは俺の本当の気持ちを全部受け取めてくれた。正直嬉しかったなぁ。もし、あのときエレナがあれ以外の答えを出したら、俺はどうしてだろうか。いや、こんな考えはよそう」


思考がネガティブにならないように心掛けるアイト。


もう、不幸な思いはしたくない。今はそれだけであった。

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