第4話 怒り


馬車は病院に着いた。少し遅れて、息を切らしている青年も到着した。アイトだ。救護隊はすぐに馬車から、リュウトを含めた負傷者達を次々に病院内へと運んだ。


「おい、息をしていないぞ!」


「なんでもいい。早く運べ」


嫌な会話のやり取りを聞いてしまった。運ばれた人々が息をしていない。それがリュウトのことを指しているのかはまだわからない。


すると、1人の救護隊がアイトの元に近づく。


「あの中にお知り合いがいるのですか?」


「はい‥‥」


力なき声でアイトは答えた。


「私達は全力を尽くします。ただ、どのような結果になるかはわかりません。一応覚悟はしておいてください」


そうアイトに告げると彼は病院内に入っていった。


アイトは呆然とした。リュウトはアイトの唯一の家族であり、大切な人であり、父親である。彼を失ってしまったらアイトは1人でどうやって生きていけばいいのか‥‥


「どうすりゃいいんだよ、ちきしょう!」


考えても仕方ないのは分かってはいるが、彼にはそれ以外にできることはなかった。


ひとまずアイトは病院の中で待つことにした。



病院の待合室に向かい、そこで待つこと1時間、誰かがやってきた。エレナだ。


「アイトさん、やっと見つけましたよ。リュウトさんはどこですか?」


アイトは下を向いたままで何も答えない。


「アイトさん?どうしたんですか?なんとか言ってくださいよ。黙ってちゃ何もわかりません」


「うるさい。ちょっと黙ってろ」


アイトは厳しくエレナにあたった。


「す、すみません」


怒ったアイトを見るのはこれが初めてで少し驚いた様子のエレナだった。

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