第3話 悲劇は突然に
アイトとエレナは昼食を済ませ、近場の商店街で夕食の食材を調達していた。
「今日の晩御飯は何か食べたいものはありますか?」
「う〜ん‥特にないかな。そんなに手の込んだものじゃなくていいよ」
「そうですか。‥‥じゃあ親子丼なんてどうですか?」
「あ〜、いいね親子丼。親子丼って作るの簡単なのか?」
「結構簡単ですよ。卵と好きな野菜と鶏肉を一緒に炒めながら、タレで味付けして、ご飯の上に乗せるだけでできちゃいます」
エレナはなぜかとても嬉しそうに話していた。
「なんかすごい嬉しそうだな」
「はい!だってアイトさんが私に、今日はあまり手の込んだ料理をしなくてもいいって言ってくれましたから。それってつまりアイトさんが私のことを気遣ってくれてるってことですよね」
「え?いや、まぁ‥そういうことになるのかな」
アイトは戸惑った。彼は単純にエレナの料理している時間が長いのでもう少し短縮してほしい、ただそれを遠回しに伝えたかっただけだからだ。
「まぁ喜んでるからいいか」
彼らは買い物を済ませ、商店街を後にした。すると商店街の外にはなにやら人だかりができてい
た。
「ん?あれはなんだろう」
「さぁ、なんでしょうか。行ってみましょうか」
彼らは人だかりの方に足を進めた。そしてエレナはその中の1人に話しかけた。
「すいません、これは何の人だかりですか?」
「そこで人が倒れてるんだよ」
「人が?ですか」
エレナとアイトは人だかりをかき分けていった。そこには数人の人々が血を流してうつ伏せに倒れていた。
「なにがあったんだこれは」
アイトはこの状況を理解することはできなかった。商店街に入る前はなにも起こってなかった場所に今は数人の人々が血を流して倒れている。エレナと商店街にいた約30分の間に一体なにがあったというのか。
「おーい、救護隊が来たぞー」
1人の男がそう叫ぶと、周りの人だかりは分裂し、道ができた。そして、そこを担架を担いだ救護隊が通る。
倒れている人々が担架で運び出される。その中の一人にリュウトがいた。アイトとエレナは驚きを隠せなかった。
「おい、親父!なんで親父が」
「下がってください。この人達を病院に運ぶのが先です。面会を希望されるなら、後で病院にきてください」
救護隊にそう言われ、一旦手を引くアイトであった。
しかし、落ち着いていることなどできず、救護隊の跡を追うことにした。
「アイトさん。待ってくださいよ!」
エレナの声はアイトには届かない。両手に食料を大量に抱えた状態だったのでアイトを追いかけることはできなかった。
「アイトさん‥‥」
何もすることができないエレナはひとまず家に帰ることにした。
リュウトは救護隊の馬車にのせられ病院に向かっていた。アイトはその跡を追っていた。
「親父がなんで、なんであんなことに‥」
息を切らしながらアイトはひたすら馬車を追いかけた。
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