第2話日常とカイザー家


エレナがアイトの家に来て数週間が経過した。アイトはリュウトがしばらく家に帰ってきてないので、少し寂しい気分ではあったが、彼のそばにはエレナがいた。なので彼のリュウトに対する寂しさは少しだけ軽減していた。


「いつも近くにいる奴がしばらくいないと少し寂しいな」


「そうですね。もう一週間は帰ってきてませんね。これもアイトさんを養うために、お仕事頑張っているんですよ」


「でも、俺もそろそろ仕事始めるから、いつまでも親父のスネをかじってばっかじゃないぞ」


「そういえば、リュウトさんってどんなお仕事をなさっているんですか?」


「確か、別の街に物を売りに行く仕事だったかな。今は多分遠くの街に商売しにいってるんじゃないかな」


「そうですか。大変ですね。じゃあアイトさんも同じような仕事を始めるんですか?」


「いや、俺の始める仕事は全然親父のとは似てないよ。俺の仕事は‥執事みたいなもんかな」


「執事‥ですか?大丈夫なんですか?アイトさん家事できませんよね?」


「そうなんだよ。でもこの仕事を偶然みつけて応募したら、なんか受かったんだよ。多分あんまり募集が来なかったんだろうな。入ったらある程度は指導してくれるらしいから、大丈夫だよ」


エレナは呆れた。アイトは能天気な性格と分かってはいたが、ここまでひどいとは思ってなかったのだ。


「はぁ‥‥ところでどこで執事の仕事を始めるんですか?」


「この街で一番権力を持ってるカイザー家だよ」


「カイザー家なんですか!?あの家系の人はみんな謎の力をもってるって噂ですよ」


「それくらい知ってるさ。謎の力をもってるから、この街のトップに君臨することができたんだぜ。カイザー家に戦いを挑んだ豪族は軒並み滅んでるらしいぜ」


「それは私も知ってます。それより、そんなところに働きにいって大丈夫なんでしょうか?」


「大丈夫だよ多分。それにどんな力で他の豪族達を倒してきたか気にならないか?」


「気にはなりますけど、どちらかといえば怖いですよそんなところに働きに行くのは」


「まぁもう決まったことなんだからさ。全力でお仕事をやってみようと思うよ」


エレナは少し沈黙した後に


「それもそうですね。頑張ってください」


エレナの質問タイムは終わり、彼女は昼食の準備に取り掛かろうとしていた。


「なぁエレナ、今日の昼めしは何をつくるんだ?」


「ちょっと待ってください。冷蔵庫の中を確認しますから」


エレナは台所に向かい冷蔵庫の扉を開けた。


「アイトさんどうしましょう。あまり冷蔵庫に食材が残ってません。これじゃお昼ご飯は作れても晩御飯はロクなものが作れません」


「じゃ買い物にいこうぜ。お昼は外で食べようよ。俺、久々に外食したい気分だったんだよ」


「それいいですね」


エレナは嬉しそうに答えた。なにせアイトと一緒に出かけたことはまだなかったからだ。


「じゃ準備しよっか」


アイトとエレナはそれぞれの自室に行き、着替えを済ませた。


「じゃ行きましょう」


「どこに食べに行く?」


「そうですね‥‥定食屋なんてどうでしょうか?」


「じゃそこにいこう」


彼らは楽しそうに会話を弾ませながら、街を歩いていた。その様子はまるで恋人同士のようであった。

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