第64話 褐色ロリ巨乳エルフ
褐色の少女はチームに激震を齎した。片時もシュウから離れず、くっ付いてまわる様は
◇◆◇◆◇◆◇◆
「シュウ、俺が言いたいことが判るか? 正体不明の鳥だけに飽き足らず、今度は正体不明の少女だと? 次から次へと不確定要素を増やしてくれるな、お前は」
「ははは、全く以って言い訳のしようがありません。故意にやっている訳じゃないことだけは信じて欲しいんです」
悄然とうな垂れる俺の膝にはちゃっかりサテラが乗っている。ハルさんのお古を着せて貰い、俺の腹に抱きつくようにしがみついている。
ついさっきまでは貰ったサンドイッチを食べていたのだが、満腹になるとこの状態になってしまった。
外見は非常に美しい少女であり、直前に俺が話していた言葉通りの特徴を備えている。すなわち褐色銀髪であり、笹穂耳を持ち、少女から女へと変わる寸前の、危ういバランスで成り立つ儚い美を持っている。
銀眼と言っていたはずだが、鮮やかな赤い眼をしており、12~3歳程度に見える外見に似合わない巨乳を持ち合わせていた。
『ロリ巨乳』
幼さの象徴たるロリと、成熟の象徴たる巨乳という相反する要素を兼ね備える矛盾。邪道だと言う意見もあるが、ある意味男性の夢が形を持って出現していた。
困ったことに身長はハルさんより低いのにバストサイズで上回っており、ブラジャーが必要なのだが当然合うサイズが存在しない。カップ数では同等のウィルマとは体の厚みが違うため流用することが叶わない。
現在は包帯を使ったサラシを巻いた状態である。胸の関係でハルさんの上着が入らず、俺のシャツをだぼだぼの状態で着て、ハルさんのホットパンツを履いている。
最初は言葉を話せないのかと思っていたが、何故か日本語とある程度の英語を話すことが出来るようだ。人見知りをしているのか怯えているのか、俺とハルさん以外には話さない状態だ。
「それで、この少女は『孵らぬ種の卵』から出てきたので間違いないんだな?」
「ええ、おそらく間違いないでしょう。現場に居た私もアパティトゥス老人も出現の瞬間は見ていないのですが、状況的に考えて他の可能性は無いと思います。
サテラ自身が直前に話していた特徴を備えていますし、『孵らぬ種の卵』は液体になり、それもサテラに吸収されてしまいましたし。
ただ不思議なことに神話では
「それで、ご老人は何と言っているんだ?」
「創造神の祝福を受けていない新たな種族は不和の種になるから、俺たちで引き取って欲しいということでした。まあこの状態ですし、他に取れる手立てもなかったのですが」
「ふーむ。本当に新たな種族なのか? 森妖精の亜種とかじゃないのか?」
「決定的に違うのは髪の色と肌の色、スレンダーというか薄い体型が多い森妖精ではあり得ない胸に、濃密な魔力を内包しているらしいことです」
「判った。どちらにせよ、無力な少女を放置するという選択肢は無い。チーム全員も同意見だ、しばらくはシュウとハルで世話をするように」
「判りました。ご迷惑をおかけします。サテラとスカーレットを含めた3人分頑張りますので、よろしく取り計らってください」
「気負わなくても良いぞ、シュウ。俺も立場上厳しい態度を取らざるを得ないが、個人的には少女を保護することには賛成だ。スカーレットもチームのマスコットとして定着しているしな」
そう言いながら気の良い上司は片手を上げて去っていった。人の情けが身に沁みるとはこのことだろう、良い上司にめぐり合えた事を喜んでいるとハルさんがやってきた。
「あ! シュウ先輩。あらあら、サテラちゃんは寝ちゃったんですか。ふふっ、そうしているとパンダの親子みたいですよ、シュウ先輩」
「ははは、結婚は出来ないと諦めていたのに気がつけば二児の父です。世の中何が起こるか判らないものですね。どっちも厳密には人類じゃない娘ですがね」
「スカーレットちゃんは物怖じしませんが、サテラちゃんは怖かったんだと思いますよ。私も孤児でしたから、見知らぬ人ばっかりの環境に放り込まれたら不安になるのは判ります」
「すみません、正直僕だけでは女の子の世話なんて出来ないので、今後も色々とご迷惑をおかけしますが、お力添えをお願いします」
俺が神妙に頭を下げると、ハルさんは軽く笑い飛ばしながら言った。
「大丈夫ですよ。孤児院育ちですから、子どもの世話には慣れていますし、私たちの娘だと思えば苦にもならないですよ」
ん? なんだかとんでもない事を言われたような気がする。聞き返そうとしたが、一足早くサテラを抱き上げると、寝かしつけてくると去っていった。
ああチーム全体を指して私たちか、これだから自意識過剰な中年は困る。女性にちょっと優しくされると自分に気があると思い込む、ストーカー野郎になってしまうところだった。
『カローン』内の割り当てられた自室で、明日以降にしなければならない事を纏めていると、外からドアがノックされる。
訝しげに思いながらドアを開けると、サテラを連れたハルさんが困った顔で立っていた。聞けば俺が居ないとサテラがグズって眠ってくれないらしい。
「ごめんなさい、ハルさん。ご迷惑おかけしました。それじゃサテラ、お父さんと一緒に寝ようか?」
そう言うとサテラは俺に抱き着いてくる。甘えん坊だなと思いながら抱え上げてベッドまで運ぼうとすると、ハルさんから待ったがかかった。
「シュウ先輩、ご迷惑じゃなければ私も一緒で良いですか? 父親扱いとは言え、血が繋がっている訳でもないですし、何か間違いがあってはいけませんし……」
「ハルさん、それはないですよ。そのぐらいの分別はありますし、何よりもご存知の通りEDです。物理的に不可能ですから」
苦笑しながらそう言うが、どうもハルさんは何やら言いたそうにモジモジしている。ここはひとつ折衷案を提案してみよう。
「あ! そうだ。ミーティングスペースを片付けて、僕とハルさんのベッドを運びこむんです。それで並べて川の字で寝るって言うのはどうでしょう? サテラが真ん中で」
この辺りが落としどころだろう。結局三人で川の字になって寝ることにした。明日はサテラの衣服や身の回りの物を購入せねばならない、手先が器用で機織りや染色を得意とするのは地妖精だからだ。
取りあえず地球基準で一週間程度は『アスガルド』に滞在している予定だから、必要な物をピックアップして可能な限りここで揃えるようにしよう。山妖精の隊商も来ることだし、そこでも掘り出し物があるかもしれない。
山妖精と言えばスカーレット用の寝床と、肩当てにハンドガードの作成を依頼したから、採寸も兼ねてスカーレットと一緒にガドック師を訪ねる必要もある。
男が、それもおっさんの近くじゃハルさんも寝辛いかと思ったが、既に規則正しい寝息が聞こえている。まあそうか、転移初日には全員でここで眠ったし、こういう状況にも慣れているのかも知れない。
ハルさんの髪から漂う柑橘系の物と思われるシャンプーの匂いと、サテラから子供特有の甘い匂いがして、なんだか奇妙な感じがした。
随分と長い間、一人寝をしてきたので、自分以外の体臭を感じる状況に懐かしさを覚える。十年一昔と言うが、俺が心に負った傷は未だ過去にはなってくれないようだ。
既に割り切ったつもりだったが、意外に未練たらしい自分に呆れつつ、サテラの体温が高い小さい手を握り返して、無理やり目を瞑った。
いずれはこの感情も時間が押し流してくれると思いつつ、薄暮が続く夜は更けていった。
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