第149話 わたしがわたしになった日

 エアストリームに戻って大量の戦利品を整理。


 備え付けテーブルだけでは足りないので補助テーブルその2まで出し並べる。

 今日食べられないものはストックか冷蔵庫へ。

 松戸お勧めサラベスのジャム3種もストック行きだ。


 結構冷蔵庫やストックに入れたがそれでもテーブルの上は豪勢な感じ。

 ローストビーフだの寿司だのサンドイッチだの。

 総菜類が12種も並んでいる。

 よくもこんなに買ったなと思う程。


 その他に主食的なパン類もあるしサラダも別にあったりする。

 松戸が瓶入りの高い生ジュースを各々のタンブラーに入れて配った。


「それでは、強敵撃破を記念いたしまして、不肖私三郷みどりが乾杯の音頭を取らせていただきます。乾杯!」


 全員で唱和して杯をぶつけ、飲む。

 フレッシュで美味しいジュースだ、これ。

 食事に合うかどうかは別として。


 俺がジュースに感動しているうちに戦いは始まっていた。

 ビデオの早送り再生のように各総菜が姿を消していく。

 あ、この分ではまた俺の取り分が無くなる。

 俺もあわてて参戦。


 とりあえずカリフォルニアロールを食べ、ローストビーフを食べ……

 全部なくなるまでにそれなりに食べることに今度こそ成功した。

 本当はこれが当然なのだ。

 十分以上に量があったはずだし。


 ◇◇◇


 そして今はいつもの南の島。

 エアストリームごと移動してのんびりしている。

 今、皆でいるのはあの砂浜。

 海を渡る風が心地よい。


「そう言えば三郷先輩、みらいがお姉ちゃんって言っていましたけれど」

 みらいが何か言おうとするのを三郷先輩が手で制した。


「そうですね、言っておいた方がいいですね」

 三郷先輩はサングラスを外す。


 いつもと目の色が違う。

 いつもは濃い灰色の瞳だが、今日は大分明るい灰色の瞳。

 その状態で先輩は立ち上がり守谷の横に並んだ。


 並ぶとみらいと三郷先輩はそっくり。

 顔の形も目の形も鼻の形も口元も。

 違うのは色だけ。


「私の髪は染めているのです。本当は真っ白なのです」

 先輩はそう言ってサングラスをかけた。


「そっくりなのは当然なのです。ほぼ同じ遺伝子配列で人工的に作られたのですから。私がバージョン26でみらいがバージョン27なのです。

 戦闘指揮用としてある国の軍関係の研究機関で作られたのです」

 三郷先輩はそう立ち上がり、元の場所へと座り直す。


「私達は戦闘指揮用として人や妖怪、魔人等の遺伝子を組み合わせて作られたです。

 みらいことCラインバージョン27が作られた時点で、バージョン17、20,21、23、25、26の意識がある状態だったです。


 ここで生きていると言わなかったのはそれなりの理由があるです。

 バージョン21以前は体が成長出来ずに脳だけで機能させていた状態だったです。

 23は脳は体内に納まっていたけれど頭以外は胎児のまま、液体の中に入ってパイプを接続された状態だったです。

 25の身体は3歳児程度まで成長できたけれど内臓に深刻な欠陥が多数あって、やっぱりパイプを接続されて生きていた状態だったです。

 26,私でやっと人型のまま生存可能な状態だったのですが、それでも両足は機能せず両腕も極端に力が無く、あと色素異常もある状態だったです。


 その頃はまだ皆意識とか人格とかも無かったです。

 みんな混ぜこぜで実験に対応して情報のやりとりをしているだけの状態でした。

 それが変わったのはバージョン27、みらいが生まれた時でした」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る