第143話 希望

 松戸を引っ張ったまま連続で逃げつつ見る。

 既に全て復元された敵が俺達がいた場所を例の波動が薙ぎ払ったところだった。


『松戸、動けるか』

『ごめんね、離脱するわ』


 もともと松戸は普通の人間。

 俺の能力をある程度使えるけれども。

 仮にも神に対して通用するような攻撃を何度も出来る力は無い筈なのだ。


 速度も本来は普通の人間よりややましな程度。

 神に対抗するために術等で無理やり強化している。

 その無理も今の2回の攻撃で限界だったのだろう。


 そんな予感がしたから松戸を抱えて逃げたのだ。

 どうやら正解だったらしい。


「心臓がコアじゃないのか」


「予備のコアがあるらしい。予備のコアも同時に潰さなければ倒せないようだ」

「予備のコアは何処に」

「わからない」


『頭、右腿、左腿の3箇所よ』

 松戸が教えてくれる。

 というか何故知っているんだお前。


『他の神の能力借りているからね。でも今の私では戦える状態じゃない。最悪奥の手が無い訳でも無いけれど』


『奥の手?』

『使って倒せる確率は良くて五割。あと仕掛けた後の保証無いから1回だけ有効ね』

『なら無しだ』


 松戸こいつを死なせる訳にはいかない。

 しかしまだ奥の手なんて持っているのか。

 まあそんな自爆攻撃させる気はない。

 というかさせないようにするけれど。


 今度は俺とミシェルで連続攻撃を仕掛ける。

 集中して一撃を加える攻撃から、俺とミシェルで交互に仕掛ける形へ。

 ミシェルが斬撃を仕掛け、離脱すると同時に俺が突撃。

 俺が仕掛けている間にミシェルが体勢を立て直す。

 その繰り返し。


 だが何回か目に対応された。

 残った腕を俺の目の前に出される。

 とっさに刀を振って慣性力まで使って回避。

 間一髪例の攻撃の波動が俺の背後を抜ける。

 連続攻撃もこれ以上は無理なようだ。


 距離を取ってランダム回避を続けつつ体勢を立て直す。

 HPに例えると今の俺は70を切った状態。

 ミシェルも同程度だろう。

 そして敵はようやく1800を切るかという程度だ。


 駄目だ。

 このままでは勝ち目は無い。

 何とか隙を見てコア3個位は潰したい。

 そうすればミシェルなら残りは何とかしてくれる可能性がある。


 でもそんな隙は無い。

 一撃なら通りそうでも連続でコアを狙えるような隙は無い。


 ふと、何か聞こえるような気がした。

 松戸が何かを唱えている。

 ひょっとして。


『駄目だ松戸、奥の手はまだ早い!』

 俺が念話でそう怒鳴った時だった。


『そうですよ。まだそれを使う時ではないです』

 聞き覚えのある念話が聞こえた。

 同時に見覚えのある3人が出現する。

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