第142話 壁(2)
俺とミシェルは戦い続けている。
何度も敵を斬った。
敵の攻撃はまだ俺にもミシェルにもあたっていない。
傍目には俺とミシェルが有利なように見えるかもしれない。
でも違う。
俺達が苦戦している。
敵はどんな被害を受けてもすぐに治してしまう。
こっちは敵の波動攻撃が一度直撃したら終わりだ。
更にこちらはいつまでも今の状態で攻撃できる訳ではない。
いつか疲労や力の使い過ぎによる限界が訪れる。
まだ俺もミシェルも大丈夫だが。
勿論敵にも無限の力がある訳ではない。
でもこのままではこっちが先に限界に達する。
ヒットポイントで例えれば俺が100でミシェルが120程度。
敵は目の前に見えているだけで1000超えで正確には未確定。
なお敵は更に他空間から減ったHPを補給可能。
このままではこっちが負ける。
このままでは。
ミシェルの斬撃と俺の斬撃が共同で敵を襲う。
残念ながら
直後に二人とも逃れ、一瞬後に例の波動があたりを薙ぎ払う。
今回も何とかそれを避け切ったが、せっかくの攻撃の成果も瞬く間に復元される。
まだだ、まだ足りない。
と、不意に何かの衝撃が空間を走った。
『この近郊の土着の神々の助けを借りて空間を封鎖したわ。もう他の空間からエネルギーを得ることは出来ない。目の前の敵だけを倒せば解決よ』
同時に敵の力の総量も出る。
さっきのHPで例えると俺が100でミシェルが120、敵は2200だ。
まだまだ絶対的な差だが底が見えただけ進歩。
そして松戸も剣を抜く。
今度は少し反りの入った、そしてやっぱり長い長い刀だ。
全長2メートルは超えているだろう。
「今度の刀は?」
「祢々切丸。日光二荒山神社の御神刀」
松戸は八双にその長太刀を構える。
その構えに不吉なものを感じた。
『相打ち覚悟なんてやるなよ。俺自身の損害無視して助けるからな』
念のため釘をさしておく。
余裕が無いので念話で。
『ばれちゃった』
『やりそうな事は想像つくんだよ』
本当に危ない奴だ。
目的意識が生存本能より先走っている。
今度は松戸が一番先に敵に仕掛けた。
鮮やかな斬撃は惜しくも心臓には届かなかったがそれでも胴体を深くえぐる。
すぐに俺とミシェルが追撃。
ただどちらも心臓には届かない。
離脱してすぐにミシェルが仕掛ける。
左手先で防がれたがその代わり左手が一時使えなくなる。
そして俺の刀が右手を貫く。
両手が復元するまでのわずかな隙を松戸が狙う。
長太刀が確かに心臓部を貫き、付近の肉ごと切り裂いた。
やったか、と一瞬思う。
念のため松戸を抱えて近くから離脱。
「どうだ」
「だめだ、復元されている」
ミシェルの声。
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