第10章 ある冬の日に
第139話 不穏の兆候
ある国ある地域で原因不明の疫病が発生。
死者は数万人にも達する勢い。
ネットで流れたそんな噂。
しかし情報はその国の政治体制にガードされた。
噂が事実なのか。
日本国内ではきちんとした報道はされずにその話は消えた。
エアストリーム内のテーブル席。
俺と松戸が向かい合って座っている。
「状況は」
「真っ黒。間違いないわ」
前のテーブルにはある国の地図を表示したタブレットPC。
数箇所に印がついている。
「噂のあった場所に印をつけた。情報の正確性は期待できないけれど何か円を描いているように見える。ある程度近づいて見てみればもっとわかるのだろうけれどね」
「やめた方がいい。今近づくって言った瞬間、神眼が危険信号出してきた」
俺は神眼を発動させている。
「なら間違いないかな。この事を秀美達に言う?」
「今の時点では言いたくない。一人で偵察にでも行かれたら大変だし」
「そうね、やっぱり」
今の時刻は午前9時。
世間は稼働タイムに入る頃。
でもうちの学校では皆様そろそろお休みの時間だ。
委員長も綾瀬もみらいも寝ている事だろう。
最初に気付いたのは松戸だった。
松戸からスマホ使って呼び出しを受けた時は何事かと思った。
通常なら異空間移動使って直接言いに来るのに。
寮の前で待ち合わせ。
事情を聴くためにわざわざ歩いて向かったいつものエアストリーム。
そこで俺は、松戸から聞いた。
強大な存在が召喚された可能性があると。
彼女はこの事態に備えて世界各地にアンテナを張っている。
例えば
○ 各地の気象レーダーの画像
○ アマチュア無線の交信状況
○ 世界各地のサーバーとのPINGに要する時間
○ 龍脈の流れ
等々をパソコンやら術式やらで調査管理しているらしい。
そのうちのいくつかがある国の同じ地域を中心に通常と異なる反応を示した。
それで調べて出てきたのがある国での疫病の噂だった訳だ。
「しかし随分と意外な所で召喚したな」
神聖騎士団や聖霊教会等の一神教系の活動なら、歴史的には中東とか欧米だろう。
「生贄に大量の人間が必要なんでしょ。なら人口が多いあの国に目をつけるのは当然だわ。何があっても党に不都合なことは隠蔽されるしね」
「既に召喚されていると思うか」
「召喚されていなければ好都合だけどね。でも時間の問題よ」
松戸はそう言ってため息をつく。
「本当は召喚される前に片付けられれば簡単たったのですけれどね。どうしようかしら。本当なら全員に話して、全戦力で速やかに現地に向かって勝負を挑むのが正しいのはわかっている。でも」
「わざわざ俺だけを呼び出したのはそれなりの理由があるんだろ」
松戸は小さく頷く。
「情報の正確性は怪しいけれど、それでも生贄になった人数が多すぎるわ。これだと当初私が予想していたのより遥かに強大な存在になる可能性が高い。
だから正直皆を巻き込むのを躊躇しているの」
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