第136話 わかってほしい
『こういう時すら嘘つけないのも佐貫らしいと思う。でも』
水の音。
横で綾瀬が身体を起こす。
そして次の瞬間、上から覆いかぶさってきた。
上から腕も足も絡めて強く抱きつかれる。
密着した状態で囁くような声で。
「私を性的にでも猟奇的にでも食べていい。もし佐貫を繋ぎとめられるなら。他に何をしてもされてもいい。私で駄目なら秀美もユーノもみらいも。皆そう思っている。佐貫の為じゃない。自分の為。自分がそうしたいだけ。
少しでもいい。わかって欲しい」
綾瀬の身体の重みを感じる。
体の密着した部分がだんだん熱くなる。
お互いの服が濡れていてリアルに綾瀬の身体を感じる。
心音すら聞こえる位に感じる。
考えてみれば綾瀬は何回もまっすぐにそう俺に伝えてきた。
だから俺も誤魔化したくはない。
たとえその返事が綾瀬の意にそぐわなくても。
俺は小さい綾瀬の身体をそっと両手で抱きしめる。
壊れ物を扱う位そっと。
「ごめん。でも俺も同じ位綾瀬も皆も大切だから」
ちょっとだけ体を上に浮かせて念話でなく口で言う。
今は自分の口で言いたかったから。
綾瀬は回した腕に更にぎゅっと力を入れて俺を抱きしめ、そして少し力を緩める。
「わかった。じゃあ訂正する。
佐貫がどういう態度を取っても、どんな危険な所に行っても見逃さない。必ずついていくし嫌でも付き添ってやる」
俺はもう一度軽く綾瀬を抱きしめる。
「ありがとう」
綾瀬も腕にちょっと力を込めて、それから立ち上がる。
「買い物行こう」
俺も立ち上がる。
若干綾瀬の後ろ側に立ちある事に気づかれないように。
実は今の、結構やばかった。
綾瀬が俺より小さくて足も回していたから気づかれなかったと思うけれど。
俺の思いと関係なく俺の身体の一部が反応していた。
しょうがないだろう。
俺は男だし綾瀬は若干発育遅いけど美少女だし。
特に濡れた服で体温や体を直接感じたのが厳しかった。
綾瀬に気づかれないように俺は立ちあがる。
さあ気を取り直そう。
別の事を考えよう。
そうだ、まだ行ったことないけれど有名なスーパーを思い出した、
今日はそこへ行ってみるか。
場所は部屋に戻ってネットで調べる必要があるけれど。
「服も濡れたから着替えて20分後、午後4時に集合でいい」
綾瀬は頷く。
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