第134話 食い倒れ休憩!

 結果を言うと大丈夫ではなかった。

 午後の訓練など出来る状態ではない。

 皆食べ過ぎで倒れている。


 みらいは食後真っ先にダウンし固定ベッド行き。

 三郷先輩は、

「変形できない!」

と嘆いた後義足付きでサングラスをかけたまま固定ベッドの守谷の脇に倒れた。


 残った4人で何とか食器類やらテーブルやら気力だけで片付ける。

 松戸も遂にそこでダウン。

 いつもの俺の指定席である長椅子を奪って伸びた。


 委員長も気力だけでテーブルをベッドに変形させた後、シーツをかけずにそのままその上に倒れ込んでいる。

 綾瀬は行方不明。


 そしてそこまで暴食していない分余裕がある俺は、のんびり島の風景を見ていた。

 エアストリーム内に居場所が無いので外へ出たが、特にやる事も無い。


 本当は釣りでもしたいところだ。

 でも食料はまだ山ほどあるようなのでやめておく。


 とすると少し散歩でもするか。

 と言っても道路など無い。

 無人島で大型哺乳類がいないので獣道すら無い。


 だから散歩と言っても空中散歩。

 道が無いので川をさかのぼる。

 このコースは前にも来たなあ、と思いつつ川を遡上。


 やがて濁った水が澄んで湧水を湛えた池だか泉かに辿り着く。

 そしてそこにTシャツ姿のまま目を閉じて水上に浮くようにして横たわって涼んでいる綾瀬がいた。

 何かすごく涼しげで気持ちよさそうだ。

 絵のようにきれいにまとまっている感じ。


 ちょっとこれはお邪魔するのは悪いかな。

 そう思って引き返そうとした時。


『来ないの?』

 念話で聞かれる。

 気付かれていたようだ。


 ならばと思って綾瀬の横に着地。

 脚をつけた瞬間は冷たいと感じたが、慣れるとちょうどいい水温だ。


『空飛ぶときの要領。ちょっとだけ水面に着くくらいで上向きで浮いていると気持ちいい』

 との事なので真似してみる。

 あ、確かに涼しくて気持ちいいかも。

 直射日光も崖に遮られて届かないし。


「確かにこれ……」

 しゃべろうとすると口に水が入りそうになった。

 綾瀬が念話で会話していた理由を遅まきながら理解。


『確かにこれは気持ちいいな。程よく涼しくて』

 言い直す。

 綾瀬がちょっと笑った気配。

 今言い直した理由がばれたようだ。


『ちょっと食べ過ぎた。室内に居場所がないのでここに来てみた。ここは結構好き』

『確かに美味しかったからな。最終仕上げは綾瀬だろ。ありがとう』


『今回は素材が良かった。それだけ』

『でも海鮮丼のたれや漬けや味噌汁は綾瀬が作ったんだろ。それに刺身を切り揃えたのも』

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