第127話 猛獣先輩、復活

 弁当やおかず、お茶等色々買ってトレーラーに戻る。

 メインテーブルのある場所はベッドと化しているので補助テーブルを出し、買ってきた食品を並べた。

 600円強の予算でも量・品目的に結構豪華だ。


 ちなみに行ってきたのは新今宮駅のすぐ近く、ド派手な黄色と赤の看板が目印の24時間営業のスーパーだ。

 店付近で若干異臭を感じたが気にしてはいけない。

 その分確かに総菜類が安いから。


 タンブラーにお茶も注いでさあ食べるぞ、という時に左側で何か気配がした。

 黒色の流線形の機動ポッドが人型に変形する。


「食べ物の匂いなのです。おなかすいたのです」

 三郷先輩が起きてきた。

 夜のせいかサングラスを外している。


「夕飯の刺身盛り合わせは明日に変更だそうです。魚捌きに行った連中が疲れ果てていてそれどころじゃないみたいなので」

「頭と尻尾落とした状態で60キロ以上ある大物なのです。素人が扱えばそれだけで疲労困憊するのは当然なのです」

 三郷先輩はこの顛末を予期していたみたいだ。


「よくそんなの釣り上げましたね」

「釣り上げていないです。釣りは足止めに使っただけで、あとは接近してとどめさして血抜きして異空間移動かけたです。切断も異空間移動の時に空間面を使って切ったです」


 チートに能力を使いまくっているようだ。

 しかも異空間移動は三郷先輩自身の能力ではなく乗っている機械の能力の筈。

 この天然的な能力の使い方こそが管制能力の神髄なのだろうか?


 三郷先輩は調理場から箸とタンブラーを持ってきて俺の横に座る。

 自分でペットボトルのお茶をタンブラーに注いで一気飲みする。


「うーん、起きがけの一杯最高なのです」

 そう言って今度は俺の夕食の方に視線をやる。


「悪いスーパーを使っているです。女の子が買い物に行けない場所なのです」

 そういいつつ何の予備動作もなく右手の箸がイカ大根の大根をかっさらう。


「ん……味はまあ及第点なのです」

「先輩これ俺の夕食……」

「焼肉定食、じゃなくて弱肉強食なのです」

 三郷先輩は高らかにそう宣言する。

 そして今度は2個98円のおにぎりの片方を箸で取った。


 まずい、これでは俺の分が無くなる。

 慌てて俺も夕食を開始する。

 俺が残ったおにぎりを食べ、48円の白身フライを食べ一服しているうちに、三郷先輩は俺のメイン予定だった100円の豚肉ごはん弁当をしっかり食べ終えた。

 更に俺がおやつ代わりに買った70円のロールケーキを丸かじり。


「うーんまあまあです。腹5分目位ですが今日はこの位にしてやるです。次は沖縄のキロ弁希望なのです」


「三郷先輩、燃費が悪いですね」

 つい俺はそう言ってしまう。


「うーん、ヒサシゲにもそう言われているです」

 ヒサシゲ……ちょっと考えて該当者が思い当たる。

 狂科学研の開発担当、後台久重先輩だ。

 そう言えば三郷先輩が乗っているこの機体も後台先輩作だったな。


「ついでだからちょっと外をお散歩しませんか、です」

 という事で俺は先輩と外に出る。

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