第124話 遊びの時間も重要です!

 怖い、と思う。

 これこそが本来の管制能力なのか。

 委員長や松戸、そして綾瀬の理不尽な異空間移動ですら読み切って対処できる。

 そんな俺達の考えがわかったのだろうか。

 三郷先輩はふっと軽く笑って言う。


「実際は私の能力、そうたいした能力じゃないですよ。この前の侵攻の時、私だけでは対処方法は見つけられなかったですしね。という訳で問題提起は終わり。今日は学校もあったから後は遊んで食べて寝るですよ!」


「もしよければ各自練習を……」

 委員長は今の敗北がそれなりに堪えているみたいだ。

 しかし、


「駄目です!これからは遊ぶ時間です!」

 委員長の申し出を三郷先輩はあっさり却下する。


「これから美味い魚を釣らなければならないですし、海外お買い物も行きたいです!それに、」

 三郷先輩はそう言ってふっと優しい笑顔で笑う。

「考えるのは少し時間を置く方がいいです。いますぐ対処を考えたら、狭い狭い範囲で答えを探し回ってつまらない解答を出してしまうですよ」


 ◇◇◇


 三郷先輩と守谷が釣りセットを持ってサンゴ礁外方向へと飛んで行った。

 松戸と綾瀬は第1回お買い物。

 日本の商店も開いている時間なので今日は日本国内を攻める予定らしい。

 俺と委員長は取り残されて二人でのんびりと海を見ている。


「何か凄かったな、さっきの」

 俺の台詞に委員長が答える。


「ん、さすがにちょっと自信を無くしたかな」


「でも三郷先輩を連れてきたのは委員長なんだろ」

 松戸がそんな人脈を持っているとはとても思えない。


「ん、実はお兄経由で頼み込んだ。お兄も指揮所詰め長いから知っていたみたい」

「確かに実力アップには適任だよな。わずか1回の訓練でこうも考えさせられるとは思わなかった」

「だね」


 確かにさっきの模擬訓練は衝撃だった。

 指揮方法の違いもそうだしその効果と戦闘結果も。

 だが。

 ふと俺は気づく。


 委員長は基本的には素直でくそ真っ直ぐな人間だ。

 急いで答えを出すなと言われたらそんなに長い事同じ件にこだわることは無い。

 それでも何か考えている様子なのは、多分きっと。


「ひょっとしてあの訓練以外に気になっている事があるのか」


「ん、わかったかな」

「何となく、な」


「ん、あのね。重要なことじゃなくてちょっと気になっただけなんだけど」

 ちょっと委員長は話しにくそうに言う。


「何か下種な感じでいやなんだけどね。三郷先輩とみらい、そっくりだと思わない」

「うーん、雰囲気や話し方は、行動までそっくりだよな。能力もか」

 確かにそれなら俺も感じた。


「顔立ちも体型もよ。今はあのサングラスをしているし髪形や髪の色、目の色も違うから一見そう見えないけど、意識すると怖いくらいそっくり」


「そうかな」

 俺はそこまでは気づかなかった。

 今考えなおしてもよくわからない。


「あとね、あの能力。あんな情報を無差別に収集して整理して同時に何人にも個別に伝達可能なんて、本来そう何人も同じ能力がいるような能力じゃない」


「内原先輩や松戸も指揮能力は持っていた筈だけど」

「内原先輩やユーノのは分隊指揮くらいまでで情報の無差別収集能力もない。内原先輩のは典型的な堕天使系の能力でユーノのは多分神官系。質がまるで違う」


 そうなのか。

 俺には今一つ知識が足りないのでよくわからないが。


「この前の大会の時に気にはなっていたんだけどね。今回目の前で見て確信した。三郷先輩とみらいの能力は根本的にはまるで同じ。今日の訓練の結果は経験の差ね。

 まあ似ているからってそれが何か、って事はないんだけれども」


 委員長はそう言ってため息をつく。

 波の音が聞こえる。

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