第9章 激闘冬合宿!~新型猛獣女子、襲来~

第122話 ゲスト、襲来!

 冬休み前の最後の登校日。

 教室から解放された午前4時00分。

 俺達5人を載せたエアストリームはいつもの南の島へと異空間移動した。

 今日から31日大晦日まで冬合宿だ。


「今度は夏合宿と違って本気で訓練もするからね。気合を入れて行くよ」

 と松戸は言っている。

 でも例によって倉庫に釣り道具等色々遊び道具が入っている。

 まあその辺りは言わぬが花、って奴だろう。


「さて今回は特別ゲストとして、訓練を手伝ってくれる方をお呼びしています」

 みらいと綾瀬が?という表情をしている。

 勿論俺も初耳だ。

 つまり委員長と松戸だけが知っているという事のようだ。


 松戸が扉を開けて外に出る。

 委員長に促され、俺達も外へ。

 いつもと同じ真っ青な空と白い砂浜が俺達を出迎える。


「さて、そろそろ来るかな。来たかな」

 俺達の前で空間が歪む。

 そして現れたのは、小さい機動ポッド。

 初代新幹線のボンネット部分だけのような形状の、高さ70センチ幅50センチ長さ1メートル位の窓のない黒色の機械。

 一見人が乗っているとは思えない大きさだ。


 そしてこの機体に似た乗り物を愛用している生徒を俺達は知っている。

 確かもう少し大きくて、もう少し乗り物感があったような気がするけれども。

 蓋のように上半分キャノピー部分が後ろに開く。

 中からでっかいサングラスをした少女が顔を覗かせた。


「おはようでーす」

 そう、2年生の三郷みどり先輩だ。


「ん、これ以上のレベルアップはうちのメンバーだけでは無理。だから訓練に最適な先輩という事で協力をお願いしたの」

「私も冬休み前半の予定ないですしね。楽しい場所で美味しいご飯付きって条件で訓練協力させてもらいまーす」


 何か武闘会の時とえらいイメージが違う。

 誰かと似ているなと一瞬考えてすぐ気づく。

 みらいだ。


 みらいを更に能天気な感じにしたと思えば雰囲気だけはそっくりだ。

 髪が超ショートで薄いオレンジ系統の色。

 でっかいサングラスの下の目の色は灰色っぽい茶色。

 だから見た目は全然違うのだが。


「でも松戸、先輩が寝る場所はどうするんだ? ベッドは5人分だしさ。異空間使って俺が毎日帰ってもいいけれど」

「私は基本この中で寝るから大丈夫なのでーす。出るのはお風呂入る時位なのです」

 うーんどういう生活だと思ってふと思い出す。

 そう言えば三郷先輩は両足が義足だ。

 ならなまじ車椅子を使って生活するよりその方が楽なんだろう。


「まあ普段はこっちのモードなんですけれどねー」

 三郷先輩がそう言うとともに、機体が変形を始めた。

 三郷先輩が背中に密着したシートごと引っ張られるように機体から上に抜け出ると、シートだったものの一部が変形して脚代わりになる。

 機体の他の部分は更にコンパクトに変形。

 小さいタイヤのついたちょっと大きいスーツケースのような形状に。


 そして最終的には黒色の義足つけて。

 ちょっと機械的なディパックを背負って。

 ちょっと変わったカートを引っ張った三郷先輩へと変形完了。

 体形的にも違和感を感じない。


「じゃーん。とりあえず一般人偽装モードでーす!」

 武闘大会の時より更に進化している。

 あのときはまだ少しメカっぽい感じがあった。

 でも今はもう、ディパックとカートのデザイン以外は一般人にしか見えない。


「何と言うか……何なんですかその機体は」

 つい俺はそう聞いてしまう。


「武闘大会用に作った変形型高機動スーツが思った以上に使いやすかったのです。

 だからあれを基にヒサシゲ……狂科学研の後台君に開発して貰ったのですよ。

 もっとコンパクトに、もっと人間形態に近くというコンセプトなのです。

 人間形態の攻撃力は無いですが飛行形態の機動性は武闘大会用以上なのです。

 ただ変形した後の飛行形態の形、後台君は嫌がったのですけれどね。あーるたいぷみたいですって。何の事かわからないです」


 俺には分かる。

 あのゲームの自機は四肢を切断した女性パイロットだったよな、設定は。

 それとも幼生成熟させたパイロットだっけか、脳だけだったかな。

 いずれにせよ異常にコンパクトな機体に人間を無理に載せているところは確かに似ている。

 まあ形はR-TYPEというよりオパオパだが。


「という訳で、食事食べて一休みしたら特訓開始でーす!」

 あ、合宿の指揮権が松戸・委員長組から三郷先輩に移動している。

 もともと俺には発言権はないのだが。


「何か前回の料理は毎回凄く美味しかったとみらいに前に聞いたのです。1人寂しく毎回寮の食事食べている私は楽しみ一杯なのです」

 絶対一人寂しくというタイプではないなと俺は思う。

 でも食事が楽しみなのは本当のようだ。


「じゃあ私と美久で朝食作って来ます」

 松戸と綾瀬がエアストリーム内に消える。


「じゃあ他の皆で食事までの間、この島を案内して欲しいです。秘密の場所なんてのもあると嬉しいのです」

 三郷先輩はそう言うと再び変形し直して上半分を開けて顔を出したモードになる。

「レッツゴーです!」


 もう行く気満々だ。

 うん、確かにこれはみらいの姉みたいなもの、だな。

 思い切り方向性が同じだ。

 しょうがないなあと俺と委員長は顔を見合わせ、そして4人で空中へと浮上する。

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