第119話 不穏の可能性
「それで何をする気だ?みらい以外には何となくばれているようだけれど」
3人とも見えなくなってから俺は松戸に尋ねる。
「さっきの敵、作られたのは1体だと思う?」
えっ。
「おい、どういう事だ」
松戸はどこからともなく新聞を取り出す。
昨夕持っていた英字新聞ではなく日本語の新聞だ。
「南米で発生した昼の地震、死者及び行方不明者は30万人以上となっているわ。
そして先程戦った敵はおそらく5万人規模の魂を生贄にしたもの。
そう思うと悪い予感がしない」
まさか……
「あの敵が他に最大5体いると……」
「最悪の場合の予想よ。でも可能性が無い訳じゃない」
「俺と松戸で戦えるか?」
「最悪に備えて偵察だけでもしておきたいの」
「でも現状把握の能力か何かでわからないのか」
少なくとも俺の神眼では何もわからない。
知識が不足しているせいもあるのだろうけれども。
「妙な反応はあるの。場所を念話で伝えるから神眼で見てみて」
松戸から座標がくる。
俺は神眼でその座標を見ようと試みる。
だが、見えない。
何か途方もない力で妨害?
いやこれはきっと妨害じゃない。
何かが爆発した際の爆炎や砂埃。
そんな感じに渦を巻いている力場のせいで中が見えなくなっている。
「何かあったのは確かなようだな」
「でしょう。私はそれを確かめたい」
松戸の言いたい事がようやくわかった。
迷ったのは一瞬だった。
松戸の事だ。
俺が断っても1人で確認に行くだろう。
元々こいつは自分自身の事を一番使いやすい駒程度にしか思っていない節がある。
ならばまあ、ついていった方が少しはましだろう。
「わかった。場所も見当はついているんだな」
「ええ」
松戸はベッドから身を起こし立ち上がる。
取り敢えず怪我や火傷等は完治しているようだ。
「準備はいいかしら」
俺は頷く。
◇◇◇
神眼がこの場所の情報を俺に告げる。
ここは南米の某国第2の都市の郊外。
通常空間より少しだけ普通の世界からずれた空間。
学校があるのと同じような場所だ。
巨大な体育館または工場のような建物があったのだろう。
そして4階建てのビルのような建物も。
だがそれらは既に……
「既に壊滅状態ね、ここは」
松戸の言う通りだった。
建物は全て分厚い鉄筋コンクリートの残骸と化している。
所々に焼け焦げた跡がある。
恐ろしい事に一部の地面は超高熱の衝撃でガラス化していた。
そしていまは風の音しかしない。
そんな場所だ。
神眼はここが聖霊教会の研究施設だった事を告げている。
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