第118話 脱出、治療、休憩中

 エアストリームの後部のでっかいベッド。

 松戸はそこに倒れ込むように横になる。


「さすがに疲れたわ。神的存在には慣れたと思ったけれど、やはり敵対すると相当消耗するわね」


 やばそうなので神眼で確認してみる。

 左半身はかなり酷い火傷。

 普通の人間ならショックだけで死んでいる。

 一応分け与えた俺の能力で何とかなってはいるけれど。


 少しずつは回復している。

 しかし治るのは相当かかりそうだ。

 何より見るだけで痛そうだし苦しそう。

 こいつの事だから痛覚遮断くらいはしているかもしれないけれど。


 という事で松戸の意志を無視して唇を奪わせて貰う。

 松戸という個体を保ったまま無理矢理エネルギー注入。

 慣れてきたせいもあり、5分程度でかなり回復。

 ここからは何もしないでも30分程度で何とかなるだろう。

 今ので自力治癒力もまた上昇した筈だし。


「無茶するなよ。まあ言っても無駄なんだろうけれど」

「まあね。それに敵の足止めをするためにも、佐貫の一撃を確実に決めるためにも、そして万が一佐貫が失敗した時の為にも必要な手だった。

 エネルギー波は刀で概念ごと散らしたしこの白衣も特殊繊維で燃えないようになっている。それでもちょっと限界近かったかな。

 あ、ちょっと待って」

 松戸はちょっと目を瞑る。


「ごめん、指揮所の事忘れていたから三郷先輩と馬橋先生に連絡入れた。全員解放して解除するって」


「解放して大丈夫なのか」

「一応ね。馬橋先生が何とかしてくれるって。勿論校長とか幹部教師の何人かには事情を説明するけれど、それも全部馬橋先生の方でやってくれるって。でも」


 その後の事は言わなくてもわかる。

 いつもの3人が駆け込んできた。


 ◇◇◇


「ん、つまり神や概念まで切断できる刀を2振り使って、ユーノが牽制と陽動と足止め、佐貫が斬った訳か」

 委員長が状況を簡単にまとめる。


「そうなるわね。あと私が使った刀と佐貫が使った刀、見かけは違うけれども同じ物よ。佐貫が使ったのが石上神宮に祀られている初代の布都御魂剣で、私が使ったのが鹿島神宮に祀られている二代目の布都御魂剣。効能というか効果は同じ」


「ん、わかったけれどあんまり無茶しないでよ。ユーノは確信犯だから言っても無駄だとは思うけれどさ」

「同意」


「あと、何故三郷先輩を巻き込んだですか」

 みらい、ちょっと怒っている。


「私の能力では指揮所の全員を眠らせたり気絶させるのは無理だからね。かと言って国宝を持ち出して刺し違え覚悟で敵を倒してきますなんて言えないじゃない。

 あの場で一番話を通じさせやすくてその能力も持っているのが三郷先輩だったの。結果的には馬橋先生にも協力して貰ったけれどね」


「わかったのですけれど、ちょっと悔しいのです」

 みらいも一応納得したようだ。


「なら特訓しなきゃね。三郷先輩と同等に力を使えるようになるように」

 みらい、明らかにげっ!って顔をする。


「ううっ、特訓は苦手なのです。でも仕方ないのです」

「お願いね、みらい。

 さて、私と佐貫は一応馬橋先生に欠席届を出して貰う予定だからいいけれど、秀美に美久にみらいは閉会式出ないとまずいでしょ。出席取るし一応優勝したんだから。お願いね。私はちょっと休んで回復するから」


「ん、わかった。佐貫、ユーノが無理しないように見張り頼むな」

「よろしくです」


 3人は出て行く。

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