第117話 本当の無茶とは
「こんな物、使っていいのかよ」
「だから先生達には出来ない無茶っていう訳。まあこの方法に気づくのもそういないと思うけれど。高浜先輩が似たような事をするけれど、あの人が扱うのは主にユダヤ教系一神教の聖遺物だし。
剣の腕そのものは秀美の方が上だけれど、万が一の場合に生き残れる確率を考えて佐貫に託すわ。一応刀の知識も導入済みでしょ」
確かに委員長や松戸の記憶からある程度身につけている。
「私が消えると同時に、あの敵をこの空間を維持したまま切り結んで。飛行は使っていいわ。ただ斬りはじめたら止める事無く最後まで完全に切り結んで。そうしないとこの刀の真の力が出ない」
「それであの敵を倒せるのか」
松戸は頷く。
「ええ。その刀は概念を切り結べる刀。切り結びさえすればあのタイプの存在なら充分に倒せる筈。鞘から出して構えてみて」
言われるとおり構えてみる。
不思議な程しっくりときた。
そして刀も不思議と新品のような輝きを見せる。
「やはり神龍系の力を持っている佐貫はこの刀に好かれているようね。
それでは私は仕掛けに行く。私が消えると同時に作戦開始よ、いいわね」
松戸はそう言うと姿を消す。
ならば俺も作戦開始だ。
敵がいる場所は指揮管制が無くとも神眼でわかる。
低く飛び立ち私鉄線路沿いに北上。
直ぐに国道上に敵が確認出来た。
何故か動きが止まっている。
更に前方へとエネルギーを放出。
いきなり学校狙いか。
だがそのエネルギーは敵の前方10メートルで散って消える。
何が起こっているのだろう。
詳細は不明。
だが、ちょうどいい。
高度を一気に上げ、真上から敵を襲う。
敵がこちらに気づいた気配。
だが、もう遅い。
飛行速度に重力を足して正に頭から叩き斬る。
逆刃の刀がひっかかり敵が抜けるのを阻止。
位置エネルギーと運動エネルギーが切れる頃。
ようやく敵は切断された。
敵の気配が薄れていくのを感じる。
事実姿も薄れてきている。
そして、灰のように散って……
前方から何かの姿が現れる。
そして俺は気づく。
敵が何故足を止めたのか。
何に対してエネルギーを放射したのか。
そして襲撃寸前まで俺に気づかなかったのは何故か。
松戸だった。
俺のより遙かに長い刀を鞘に仕舞い、そしてふらっと倒れかける。
危ない。
とっさに駆けつけた俺の手は間に合った。
何とか倒れる寸前の松戸を抱える。
右手の先に刀をもったままという大変危ない姿勢でだけれども。
「何を無茶しているんだよ」
「とりあえず、刀」
松戸が左手で俺の刀の鞘を取り出す。
松戸が倒れないのを確認してから俺は鞘を受け取って松戸に返す。
松戸はどこへともなくそれをしまい込んで、そして俺に小さく告げた。
「取り敢えず部室へ行くわよ。さすがに少し疲れたわ」
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