第114話 勝負は!そして……

 速攻で来た。

 みらい狙いの三郷先輩の槍を右手の剣で弾き返す。

 そのままみらい側に位置して三郷先輩の猛攻を受ける。


 稲田先輩よりは厳しい。

 でもみらいのサポートがあれば異空間経由の槍の攻撃筋もわかる。

 わかれば速さそのものは委員長と松戸のダブル攻撃より遅い。


 防御に加え細かい攻撃を入れて手数を稼ぐ。

 致命傷を与える事を望む程ではない。

 相手も避けるのにリソースを食われる程度に。


 俺が望むのは膠着状態。

 体力差で追い詰めるせこい作戦。

 三郷先輩と俺の能力で俺の方が圧倒的に有利なのが体力。


 ただ、問題なのがジャミングだ。

 俺だけにかけられた場合の次の一撃の躱し方。

 だからあえて異空間は使わない。

 相手の槍筋を確認しつつあくまで堅実に打って返してを繰り返す。


 そして。


 視界が突然奪われる。

 神眼もきかない。

 俺は最後に残った足の触覚で膝を曲げ後方へと身体をひねりジャンプする。

 腹ばいに着地できるように。


 何も見えないし感じない中だから多少のダメージは出るだろう。

 でも次の瞬間の一撃を躱すのには有効だ。


 あとは俺は待ち続けるだけ。

 五感が回復するのを。

 みらいからの指示が来るのを。


 松戸はうまくやっているのだろうか。

 みらいはどうか。

 でも俺はあの2人を信じるしかない。


 そして。

 唐突に五感が回復する。

 状況は。


 戦闘中の気配はない。

 神眼で確認。

 試合は終了している。


 ダメージメーターは俺が残り9割、松戸が残り5割、みらいがダメージ無し。


 勝っている。


『ダイジェストで説明するですよ』

 みらいから念話と映像が送られてきた。


 俺にジャミングをかけると同時に三郷先輩が攻撃に出る。

 だが俺は最後の跳躍でぎりぎり攻撃を躱した。

 次の瞬間みらいがジャミングを三郷先輩に仕掛ける。

 三郷先輩は仕方なく俺達全員にジャミングをかける。

 みらいも同様。


 あとは三郷先輩とみらいの体力差。

 結果、ジャミングから一番早く抜け出たのは松戸だった。

 ジャミングがかかったままの3人を倒してゲームセットだ。


 勝った。

 勝った、けどなあ。

 実感がわかない。

 何せ俺、倒れたままだったしさ。


 でも、まあ。

 取り敢えず優勝して良かったな。

 研究会設立もあのエアストリームも認められたしさ。


 そう思った時だった。

 俺の神眼が猛速度で危険を告げた。

 次の瞬間。

 あの不吉なサイレンが鳴り始める。

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