第113話 三郷先輩の咆吼(2)
「三郷選手、速攻!神仙協会乃木選手早くも……えっ!」
みらいの能力でやっとわかる今の攻撃。
試合開始と同時に。
十数軸使った上での最短ルートで乃木先輩を背後下から攻撃したのだ。
その速さは異空間を使用し、更に時間軸も使用したみらいの全速と互角。
更に軸を湾曲させて同時に残り2人の先輩を狙う。
八幡先輩はかろうじてダメージ半分で済んだが赤坂先輩はダメージ超過だ。
そして更に槍2本を別の軸経由で投擲。
三郷先輩自身も飛行形態に変形して八幡先輩を襲う。
瞬殺、と言っていいのだろう。
開始後10秒もたたないうちに終了の電子音が鳴った。
「これは……驚きました。戦闘力が無いと思われた三郷選手による圧倒的攻撃です」
「異空間を使った強襲に、多次元多目標同時切断、さらに槍の投擲ですね。どれもお散歩クラブの内原選手が得意としている高難易度の異空間戦闘術です。まさか他に使う選手がいたとは……」
「前の試合で内原先輩が使ったのを見て、指揮能力で自分自身と補助機械を操作してやったわけか。怖いわね」
と松戸が解説。
「見ただけでもそんな事が出来るのか」
「ん、理論上はね。みらいは1度の行動だけでも全て動きを解析する事が可能だろ。その動きを元にして最大指揮能力を自分自身に対して使っただけ。ただ実際に出来るというのは凄いな」
「私にはまだあれは無理なのです。モニターと解析までは出来るのですがあそこまでの指揮というか操作はまだ出来ないです。まずいのです。大変なのです」
みらいがパニクっている。
「まあそれはしょうがないわ。私達は出来る事で作戦を組むしかない。
それにあの攻撃、佐貫は一応対処できるでしょ」
松戸が言っている意味が今の俺には理解できた。
「そうか、だから松戸と委員長によるダブル攻撃なんてやったのか」
松戸も委員長も頷く。
「そう。それに私も同じような攻撃方法を持っている。
だから基本的には作戦は最初と同じ。佐貫とみらいで三郷先輩を食い止めて。私が残り2人を相手にするから」
「もし全員でユーノを狙ったらどうするですか」
「異空間へ逃げるまでね。三郷先輩の能力でも他の2人を異空間へ移動させて戦うまでは出来ないだろうし。異空間に逃げても三郷先輩が私を追ってくるようなら、その時は佐貫の出番ね。それでいいでしょ」
「ジャミングを使ったらどうするのですか」
「基本的には同じ程度のジャミングで対抗して。個別にかけたり強さを調節したりする可能性があるからそのあたりは注意してね。例外として私にかけたり佐貫にかけたりした場合は三郷先輩以外の2人を対象にジャミングをかける。それでいい」
「ん、そうだね」
「うーん、了解なのです」
「ある程度ケースバイケースでやるしかないわね。こっちは全員念話が使えるからジャミングを全員にかけない限り連絡に困らないし」
まあそうだろう。
というかそれしかない。
若干の不安を残したまま決勝戦を迎える。
◇◇◇
試合5分前。
異空間移動を使って指定の位置へ移動。
グラウンド一塁側の試合開始線。
横一列でみらい、俺、松戸だ。
小吉クラブは三郷先輩、小林先輩、安食先輩。
準決勝以外の時と同じ布陣。
これがベストメンバーのようだ。
放送委員会の解説が流れているがもう聞かない。
そして試合開始の電子音が鳴る。
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