第112話 三郷先輩の咆吼(1)

 一度エアストリームに戻って夜食。

 ちょっと早いが夜半過ぎから試合だ。

 なので軽くスパゲッティをいただき、取り敢えず休憩。

 そう思ったら松戸が何かA4何枚か刷りの紙をテーブルの上に置いた。


「何だ、それ」

「学校新聞よ。うちの研究会を特集している奴。わりと良く書けているわ。読む?」

「ん、私達は午後の試合の時にも読めるから後でいい」

「同意」


 との事なので読んでみる事にする。

 スポーツ紙のような怪しげなタイトルがずらずら。


『混合術式研究会、秘密裏に結成された謎の研究会』

『部室と称する豪華キャンピングカーの中身は!』

『疑惑の活動歴に迫る!』

『女子4人男子1人!佐貫君のハーレム疑惑!』


 気になったので一番最後の記事を読んでみる。

『……特に委員長を務める柏秀美(16)と一緒に行動することが多い。なおクラスメイトに取材したところ匿名希望の虎男氏(15)は『あれをハーレムと呼ぶのなら、俺達はハーレムなどいらない!』と何故か恐怖感を露わに語った。なお複数の男子生徒からも同様の反応及び意見を聴取しており、同研究会が佐貫龍洋(16)のハーレムである可能性は残念ながら低い……』


 ハーレム疑惑を晴らしてくれたお礼に勝田君には学食のラーメンおごってやろう。

 そう思いつつ他の記事もひととおり読んでみる。

 なかなかよく調べてあるなというのが俺の印象。

 神聖騎士団侵攻時の俺達の行動一覧、エアストリームを夏合宿に使った際の早朝集合時の目撃談、挙句の果てには服装チェックまで掲載している。


 ちなみに服装チェックによると、委員長は偽JK風、綾瀬はGU派、松戸は西海岸系ファストファッション、守谷はセブンティーン系、俺はヒキニート系だそうだ。

 少なくとも俺の中身はバレている。笑えない。


 他にも各々の戦力分析とかも載っている。

 ちなみに総合評価が一番低いのが俺だ。

 他にも色々とよく調べて書かれている。

 流石に松戸の世界消失企図事案は載っていなかったけれど。


「そろそろ準決勝第2試合、スタートするですよ」

 みらいの言葉とほぼ同時に中継が入る。


「さあ準決勝の第2試合は神仙協会と小吉クラブです。どうですか、青井さん」

「そうですね。例によって戦闘力そのものは神仙協会なのですが、これも小吉クラブが勝つのでしょうね」


「何か投げ遣りですね青井さん」


「ええ、確かに。実はまさかお散歩クラブが小吉クラブに負けるとは思っていなかったもので。あ、でも小吉クラブの出場選手が替わっていますね。三郷選手はそのままですが、残り2人が町屋選手と根津選手になっています。

 これはどうなんでしょうか、六町さん」


「うーん、これは主力の2人を大事を取って休ませたと思っていいのではないでしょうか。

 町屋選手も根津選手もあまり戦闘向きの選手ではありません。どちらもそれなりの妖術は使えますけれど、そして神仙協会は術にめっぽう強い事で定評があります」


「でもそれですと大幅に神仙協会が有利という事になりますよね」


「デモンストレーションね、私達に対しての」

 松戸がそうつぶやく。


「デモンストレーションって、何をする気だ」

「三郷先輩自身の戦闘能力のデモンストレーションよ。私達が1回戦をみらいに任せたのと同じ。補助脚にして両方の補助腕に槍を構えているわ」

「ん、そうだね。やる気だよ」

 委員長まで同意する。

 とすると、まさか……


 試合開始の電子音が鳴る。

 その次の瞬間、いきなりダメージメーターが一つ動いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る