第111話 対 TRICKSTERS戦(2)
ちょっと安心して下を見ると、綾瀬も既に勝負が終わったらしい。
相手のダメージが規定を超過している。
綾瀬独特の異空間移動にやられたのだろう。
あれは異空間戦闘に慣れている程ひっかかりやすいと松戸も言っていたしな。
そして委員長対友部先輩の戦いはまだ続いていた。
異空間移動も使い途切れ途切れに見える委員長。
姿がしっかり見える状態なのに凄まじい速さの友部先輩。
攻防が速くかつ複雑すぎて俺にもよくわからない。
ダメージ表示はどちらも規定値の3割以下。
表示が少しずつ増えている。
でもどちらも決定打には程遠い。
様子がよく見えないのがもどかしい。
守谷がいれば詳細な状態がわかるのだろうが。
不意に委員長のダメージが一気に跳ね上がる。
規定値まであとほんの少しだ。
慌ててた俺が見たのは意外にも、明らかにしまったという顔をした友部先輩。
両腕で前をブロックして、半ば跳ね飛ばされつつも友部先輩を襲う委員長の右脚。
一瞬後、ダメージの値が逆転する。
友部先輩のダメージ値が規定超過。
試合終了の電子音。
委員長の勝利だ。
そして混合術式研究会の。
まだ空中にいた俺も着地する。
「やられたな。まさかあんな無茶なフェイントをかけるとは」
「これくらいしないと先輩は捕まりませんから」
委員長と友部先輩との会話。
委員長の言葉はやや固い。
「先輩はやめてくれ。昔通りユカでいい」
友部先輩がそう言って笑みを浮かべる。
「でもそう呼んでいたのは私じゃ……」
友部先輩は頷く。
「でも君も秀美だ。今ので良くわかった。
本当はずっとわかっていたんだけれどな。意地っ張りで負けず嫌いで誰より一途で勉強熱心で」
委員長の動きが凍り付いた様に止まる。
「シスコンで独りが好きでそのくせ寂しがり屋で。悪かったな、今まで」
委員長の目に涙が浮かぶ。
次の瞬間委員長は友部先輩に抱き着いて泣き出した。
そして友部先輩は委員長をかかえて背中をなでている。
放送委員会のアナウンスが遠くで聞こえた。
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