第102話 邪魔者、退場する

「さあ、この霧は試合にどう影響を与えるか。六町さんどうですか」

「これは笠間選手の妖術ですね。残念ながらこの時点で試合は決まったかと」


 ダメージメーターが1人、また1人ずつ超過値を示す。

 無論マカデミアンナッツの方だ。


「霧で視界を塞いだ後、稲田が異空間移動で1人ずつ仕留めている。もう終わりだ」


 その言葉が終わる前に3人目のダメージメーターが真っ赤になった。

 ゲーム終了だ。


「あの攻撃もみらいさんがいれば効かないだろう。

 それを承知で聞こう。

 君達はTRICKSTERSにどう戦いを挑むつもりなんだい」


 松戸と委員長の視線が交差する。

 そして松戸が頷き、口を開く。


「正面からの格闘戦です。秀美、佐貫、美久の3人で、みらいは無しで」

「それって一番不利な布陣なんじゃないかい」


「ええ、わかっています」

 今度は委員長が答えた。


「それでも今回はあえて正面対決で挑むつもりです。次の試合に限らず、最初の試合以外は相手の土俵で戦って勝つつもりですから」


 おい待て。

 俺はそんなつもりはまるで無いぞ。


 でも高浜先輩は何故かにやりと笑って頷いた。

「なるほどな。田中に高速異空間格闘戦を仕掛けずあえて召喚させたのもそれでか」


「ええ」

 今度は松戸が答える。


 そうか、俺は言われて気づいた。

 2回戦の暗黒魔術研究会の時、別に相手の魔物の相手をする必要は無かった。

 綾瀬も松戸も異空間移動が使える。

 だから魔物を無視して直接田中先輩を叩きにいけばいい。


 更に言えばみらいか委員長を加えて、相手が召喚できない位に異空間から戦闘をしかければ簡単に勝てた可能性が高い。

 それに式神ももっと多数召喚が出来た筈。


 でもあえてそれはしなかった。

 正面対決を挑むつもりだったから。

 そしてそれは松戸も委員長も、そしてきっと綾瀬もみらいも了解済み。


「それなら決勝、まず間違いなく小吉クラブが上がってくると思う。それでもその方針で戦うつもりかい」


「ええ」

 松戸が返答。


「決勝戦が小吉クラブなら、みらいと私、そして佐貫とで戦うつもりです」


 俺、連戦かよ。

 そんな俺の思いと関係なく話は続く。


「それで勝てると思うかい」

「個別の戦いならこちらが圧倒的に有利です。例え1対2でも」


 高浜先輩は頷いた。

「それがわかっているなら勝ち目はあるだろう。でもやはり、みらいさん次第だな」

 そう言って高浜先輩は立ち上がる。

「お茶ごちそうさま。それじゃ」

 その言葉と同時に姿を消した。


 ◇◇◇


「ん、高浜先輩、何しに来たんだろう」

「特に意味が無いと思うわよ、あのタイプは」

 松戸はそう答えて立ち上がる。


「さて、遅くなったけれどお昼を作りましょ。今日はもううちの試合も無いからのんびり出来るし」


「同意」

 綾瀬も立ち上がった。

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