第99話 召喚戦の勝者は
だが。
圧倒的なまでの存在を前にしているのに。
松戸は不敵な笑みを浮かべているのがわかる。
彼女は何か不明な言語で呪文を唱える。
松戸の手が灰白色の石を前方にかざした。
石には五本の線が刻まれ、中心に目の形が彫られている。
目が光を放つ。
光がその巨大な異形を覆っていく。
異形の存在はその光を浴びると苦しむように体をのけぞらせ、姿を消していった。
松戸の視界が背後の綾瀬を見て動く。
綾瀬が頷いて姿を消した。
「さて試合は次のフェーズに入りました。六町さん、もう大丈夫です。なので中継お願いします」
「はい、知覚遮断から戻ってきた六町です。今は眼では見えませんが、異空間で壮絶な追跡劇が行われている最中です。
田中選手は魔力を使い果たしたらしく異空間を逃げ回っています。さすがお散歩クラブ設立者の1人だけあって私でも軸が多すぎて追い切れない。
しかし綾瀬選手、着実に田中選手を追い詰めていきます。さすがに十数軸の異空間を使っても5メートル制限は辛いか。
あ、ついに綾瀬選手が田中選手を捕らえました。一撃です。背後方向からの一撃が決まった」
視界が入れ替わる。
再び会場内を俯瞰する視界に。
電子音が鳴る。
「試合終了です。第二回戦第一試合は、混合術式研究会の勝利に終わりました。
まず連絡です。
会場で失神したり狂気に襲われた方は教職員と生徒会の指示に従って治療に向ってください」
「それで青井さん、試合経過はどうだったのでしょうか。見ることが出来なかった方の為にも全体の解説をお願いします」
「それでは順を追って解説します。
まず田中選手は第一回戦と同様、多数の邪神の使いを召喚して攻撃をかけました。
それに対し混合術式研究会は松戸選手が更に多数の式神を使って応戦。
式神は邪神の使いを撃破して反撃に出ます。
田中選手はここでナイトゴーントを召喚して式神の動きを止め、呪文を唱える時間を稼ぎます。
そして田中選手により旧支配者の一柱ともされる存在が召喚されました。
本来この存在は近くで存在を感じただけで異形の恐怖に心を掴まれ正気を失うとされています。
離れた放送席にいて、かつ精神抗力に自信がある
しかし松戸選手はその事態を予期していたのでしょう。何らかの
試合経過は以上です」
「了解しました。それにしてもそんなアイテムは一般的なものなのでしょうか」
「あのアイテムは旧神の印と思われます。しかし本来はこれほどの威力があるものではありません。仮に旧神の印だとしても流通しているものでもないし使用するにもいわゆる禁断の知識が必要です。
正直今何が起こったか解説できるとすれば、松戸選手自身か相手の田中選手、お散歩研究会の高浜部長、2年生だと呪文専門に研究している新木君、あと両研究会の顧問の布佐先生位でしょう」
「なかなかにレアなアイテムの可能性が高いですね」
「高浜部長あたりは欲しがるでしょうね。それくらいの
ますます謎が深まる混合術式研究会、本日発売の学校新聞の号外で特集しております。一部50円ですので是非ご購入下さい」
宣伝に入ったところで中継が切れた。
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