第90話 朝日と毎日と東京は?それとも産経?
「ちょっと、それって典型的な邪神遭遇事案じゃないの!」
松戸が委員長の今の発言に反応した。
「ん、そうなの」
松戸は頷く。
「あるタイプの邪神はね、遭遇するだけで在り方の違いと理解不能さに精神的ショックを受けて、気絶したり気が狂ったりするの。
特に天眼通を使える秀美や自動的に敵を分析してしまうみらいは間違いなく深刻な影響を受けるわ」
「召喚される寸前に異空間に逃げても駄目か」
松戸は首を横に振る。
「出現するだけで近隣の空間に影響を及ぼすしね。どの座標軸でも5メートル位じゃあまり逃げる意味はないと思う。勿論対処方法は無い訳でもないけれど、使えそうなアイテムは一つしかあてがないしね。
とすると、次の試合は私と美久の2人で戦うのが無難かな」
「ん、何で?」
「私は邪神を含む神の扱い等は慣れているし、美久は体質上邪神の影響を他の人より受けにくいしね。それに天眼通持ちや管制能力持ちだと万が一本当に邪神を近くに召喚された場合の精神的ダメージが大きすぎるわ」
松戸、例によって詳しすぎる。
「勝算はあるんだな」
「当然よ」
何かこういう対象だと毎回松戸に任せてしまって申し訳ないような気もする。
一番知識があるのでしょうがないのだけれども。
「ん、じゃあ次はそれでお願い。あと第3試合のTRICKSTERSと明日の第7試合の小吉クラブ、第8試合のお散歩クラブの試合は見ておきたいな」
委員長がそう言った時だ。
エアストリームのドアがノックされた。
「入ってます」
そう言って委員長チョップを喰らうまでお約束だ。
「学校新聞です」
松戸が眉をしかめる。
「もう日経と読売とヘラルド取っているんで大丈夫です!」
「え、あのー、取材……」
松戸は返答とともに有無をいわせずエアストリームを異空間へ。
数十秒後、窓の外に毎度お馴染み南の島の風景が現れた。
日本国外まで逃げてしまった訳だ。
「まさか記者をくっつけて来ていないよな」
「大丈夫。ちゃんと学校に置いてきたわよ」
ちょっとだけ安心。
「ん、ところでみらい、試合の様子中継できる?」
「場所がわかっているから大丈夫です」
みらいの中継能力はかなり強力なようだ。
それにしても例の南の島で観戦する羽目になるとはな。
「まさか新聞記者、ここを追跡してこないよな」
「妨害術式は一応かけてあるわ。みらいや美久のような能力が無ければ追跡できないかな。三郷先輩とか高浜先輩が本気になれば危ないかもしれないけれど、まあ大丈夫でしょ」
明日の新聞号外にどう書かれているかが大変怖いが、まあやってしまった事はしょうがない。
「ん、でもうちの学校新聞結構しつこいよ。普通に寮におしかけてくるかも」
「ここに泊まれば大丈夫でしょ。着替え位なら自分で持って来れるし」
確かに全員異空間移動が出来るから問題は無いけれど。
「わーい合宿です魚釣るです」
おいみらい、そんな場合か。
「ん、その前に第3試合かな」
委員長の方が正しい。
「みらい、第3試合終わったら食事の用意するから中継お願い」
「うー、仕方ないのです」
脳内に映像が映し出される。
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