第87話 まずは軽く小手調べ

 この大会は3日間で行われる。

 1日目には第一回戦を第6試合まで。

 2日目は第一回戦の残り2試合と第二回戦。

 3日目が第三回戦と決勝、三位決定戦だ。

 試合会場は学校の校庭。


 見物客は思ったより多い。中学部の生徒を含めて100人以上いる。

 そして試合会場内にいるのは委員長と守谷。


「折角だからみらいの変貌ぶりをアピールしましょうよ。だから秀美はみらいが危ないと判断した時以外は極力手を出さないで自分も防衛のみに徹して」


 との松戸の意見が通った結果である。

 相手の2年生の男子3人がとってもやりにくそうだが、まあいい。


「こちらは第1会場です。こちらから他会場の実況を交えながら放送致します。本日も放送研究会の3年六町と」

「同じく青井でお送りします。さて六町さん」

「はい」


「混合術式研究会はこの試合、2名だけで戦うつもりのようですね」

「どうもそのようです。しかも片方はあの指揮所のみらいちゃんです」


「これはどういう意図でしょうか」

「わかりませんね。普通に考えれば守谷選手は出来るだけ戦闘を避けて管制に集中。他の選手で守谷選手を護衛しながら戦闘するのが定石セオリーです。でもそれなら1人でも人数が多い方が有利な筈。それに柏選手の武器、今回は特殊警棒ですね。中学部大会では薙刀を使っていた筈です。果たしてこれは何を意味するのでしょうか」

「さて、試合が始まるようです」


 主審の中学部佐和先生の号令で2人と3人が互いに礼をした。

 肉体言語研究会は3人とも男子生徒。

 1人は前の侵攻の時指揮所で見たことがある。

 いずれもいかにも強そうな面々だ。

 見た目なら。


 試合開始の甲高い電子音が鳴る。

 委員長が軽い動きで背後に下がった。

 そして守谷が短剣を両手で構えて。

「さあ、行くですよ」

 その言葉とともに強烈な速度で移動を開始。


 守谷は異空間も使いその姿を瞬かせながら一気に敵3人の背後に走り去る。

 その瞬間に3人のダメージ判定が反応。

 守谷がすり抜けざまに一撃ずつ入れていたのだ。


「おおっといきなり守谷選手の先制攻撃。あのみらいちゃんがいきなり2年生の猛者3人に一撃ずつ入れた」


「明らかに異空間移動を使った攻撃ですね。肉体言語研究会側に油断もあったのでしょうが守谷選手も本気ではなかったと思われます。本気で倒しにいくなら3人に1撃ずつではなく1人に3撃入れて倒した方が効果的です」


 明らかに敵3人の動きが変わる。

 1人は委員長めがけて走り出す。

 そして太刀を構えた1人と打刀を構えた1人が守谷を狙う。


「甘いのです!」

 守谷はその言葉と同時に動き出した。

 一気に横に走って肉体言語研究会の2人より更に右へ。

 2人の男は向きを変えて守谷に対して2人で対峙する態勢を保とうとする。

 しかし追いつけない。


 今の守谷は異空間移動を最短最速移動だけではなく時間干渉にも使っている。

 時の流れと逆方向に僅かずつではあるが移動をかけ、結果として通常の数倍の速度で動いているのだ。

 肉体の鍛錬程度では追いつける筈がない。

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