第7章 勝ち抜け、武闘大会!

第85話 解説者による事前予想

 大会一週間前に有った中間テストも何とか乗り切り、いよいよ大会前日。

 対戦カードを決めるくじ引きだ。


 体育館に設けられた特設会場の舞台では、二年生十数人に交じって緊張気味の守谷の姿がある。

「私がくじを引きたいです!」

 の意見に誰も反対しなかったからだ。


 なお今回出場する研究会は16団体。

 うち以外は全部2年生主体だ。

 1年生は委員長や松戸の戦闘力を身をもって知っているせいもある。


 授業では能力無し異空間無しの格闘戦練習もあるが、とにかく強い委員長とどんな攻撃をしても絶対当たらない松戸の2人は別格扱いされている。

 別格過ぎて模擬戦でも俺と恐いもの知らずかつたくんくらいしか絡むことが無い。

 なお委員長対松戸で戦うと授業内では有効打が出ないまま時間切れになる。

 ちなみに俺は『普通に強い』程度。

 異空間無しの強さなら虎男勝田君とほぼ同じ程度だ。


「さて、ついに始まりました高校部研究会対抗武芸格闘大会。実況は放送研究会の3年、六町佳奈美と」

「同じく青井香夏でお送りします」

 どうも解説形式で放送が流れるらしい。


 なお俺達は体育館内でパイプ椅子に座って舞台の方を見ている。

 あくまで見物人でセレモニーとは関係無い。

 セレモニーとしてのくじ引きは舞台の上で粛々と進行中だ。

 暇なので放送に耳を傾ける。


「それにしても意外ですね、六町さん」

「何でしょうか」

「混合術式研究会の守谷選手、つまり指揮所のみらいちゃんです。あの人は私達と同じ解説席側にいる人だと思っていたのですが」

「噂ではどうも最近、色々な能力を開花させたようですね。念話で鼻歌を歌いながら上空をお散歩していたり異空間から大量の買い物袋を提げて寮に帰った姿が目撃されていたりいます」


 おい、みらい。

 お前そんな事をしているのか。

 思わず俺は心の中で突っ込みを入れる。


「成程、もし最低限の自衛能力があるならあの管制指揮能力だけでもなかなかの脅威ですね。ところで六町さんは、今回の大会はどう予想していますか」

「本命はお散歩クラブですね。対抗馬としてはTRICKSTERSや暗黒魔術研究会がからむ展開になるかと」


「六町さんは確か去年優勝したTRICKSTERSにも所属していますが、あえてお散歩クラブが本命とした理由は何でしょうか」

「選手層のバランスの良さと内原選手の存在ですね。内原選手自身は万能型、異空間移動能力も近接攻撃能力も強力ですが注目すべきは小隊級指揮管制能力です。攻撃が届かない異世界軸の超高空から試合中の全選手を監視して味方に指示伝令できる。それに流山選手の異空間を使用した暗殺術。これを避けるのは同等以上の異空間技能を持っていないと厳しいですね」


「あとの2チームはどのような感じでしょうか」


「今年のTRICKSTERSは昨年と違い完全な格闘戦優位型ですね。近接格闘戦に限れば校内最強の名も高い友部選手をはじめ、格闘戦や打撃戦に強い選手が揃っています。半面指揮管制系の選手がおらず術式や異空間能力にも若干の不安が残っています。もっともこれらの能力はこの大会で初めて他人に披露するという場合も多いので油断は禁物ですが。


 暗黒魔術研究会は、登録が田中選手のみという完全なワンマンチームです。基本的には邪神の手下を召喚して数で攻撃を仕掛けますが、あえて田中選手1名での登録という事は、おそらく危険な召喚も使用するつもりでしょう」


「あの怪物を大量に召喚してくる技ですね。でもルール上あんなの有りでいいのでしょうか」

「学校側の見解によると問題は無いそうです」


 うんうん、この辺の予想は委員長とほぼ同じだ。

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