第81話 漫画レベルの模範演技

 日曜日から俺は大会に向けての本格的な準備を始めた。


 俺以外の4人は大会で使用する武器も決めて技の練習等も始めている。

 しかし俺は使用武器の見本さえ見ていない。

 という訳で、今いるのは体育館の壁際に並べられた大会用武器見本コーナー。

 見本の武器を試しながらどれにするかを考える。


 ちなみに使用可能な武器は色々あって、主なものだけでも

 ・ 太刀(両手刀)。長さによって大太刀、太刀、小太刀あり。

 ・ 打刀(両手刀)。太刀より短く反りがやや大きい。刀、脇差あり。

 ・ 剣(両手剣)。大剣、長剣、両手剣、短剣。両手で持つ。

 ・ 剣(片手剣)。長剣、剣、短剣。片手で持ち、左右1本ずつ持つのも可能。

 ・ ナイフ。長いもの、短いもの。まあ片手で使ったり投げたり。

 ・ 拳。防護付、防護無

 ・ 薙刀

 なお特注も可能とのこと。

 なお短剣とはいわゆるナイフではなくイメージ的にはショートソードに近い。


 ちなみにうちの連中はと言うと、

 ・ 委員長が薙刀と防護無の拳の併用。

 ・ 綾瀬が片手短剣を両手に1本ずつ。

 ・ 松戸が大太刀。

 ・ 守谷が両手短剣(幅広で防御にも使用可能なもの)

を使用予定との事だ。

 なおダメージを与えるのはこれらの武器以外にも体術によるものは有り。

 つまり投げ技や関節技等も使用可能。

 ただ術や魔法等による直接攻撃は禁止だ。

 間接的に攻撃になるもの、例えば睡眠や麻痺等はOKだけれども。


 一応剣や刀の使い方や技等は知識として頭には入っている。

 委員長や松戸の知識があるからな。

 だからある程度練習すれば使いこなせる自信はある。

 でも、ここでの使い方は通常の武術とは大きく異なる。

 何せ異空間使用有だから、間合いの考え方がかなり違うのだ。


「お勧めのパターンってないか」

 俺は付き合ってくれた委員長に尋ねる。


「ん、剣道とか空手とかをやっている人は別として、普通は片手用の短剣の二刀流か打刀かな。異空間を駆使できるなら間合いにも入りやすいし。ただ異空間を使っても間合いが長い方が有利ではあるんだけどね」


 委員長は俺に両手剣を渡し、自分は長めの薙刀を手に取る。

「軽く打ち込んでみるね」

 そう言って自分は5メートル位離れて間合いを取る。


「構えて。ん、その状態で動かないでね。危ないから」

 俺は委員長に向けて両手剣を正眼に構える。

「ん、じゃあ動きをよく見ていてね」


 薙刀を八相に構えた委員長の姿が、次の瞬間ふっと消えた。

 寸後に薙刀の刃部分だけが現れ、俺の剣を弾く。

 一瞬だけ委員長の姿が左前に見えたと思うとすぐ消える。

 次の瞬間に刃が俺の喉元に突きつけられた。


 薙刀の刃部分から徐々に姿が現れる。

 ほどなく委員長の全身が現れた。

「今のが踏み込みに異空間を使った薙刀での攻撃の典型例。ただ慣れていないと接近戦時には弱いし仕掛けた後の変化が難しいかな」


「委員長のその防護無しの拳は」

「ん、これは逆に超接近戦を挑む時用だよ。こんな感じに」

 委員長は薙刀を置くと今度は俺の5メートル位先で両手を結んで半身に構える。

「動かないでね」

 そう言うと同時にまた委員長の姿が消えた。


 3メートル前に半身で左拳でジャブを撃った委員長の姿が一瞬写る。

 すぐその後に少し左にずれて同じ姿勢の委員長の姿がこれも一瞬写る。

 ジャブを撃ち続けながら委員長の姿が次第に左に回り込み、最後に現れた委員長は右ストレートをいままでジャブを打ち込んでいた場所に放っていた。

 その姿のまま完全に実体化し、委員長は構えを解く。

「5段の別空間幻影カウンターミラージュを使った典型的なフィニッシュブロー。実際はこれに投げ技やつかみ技をからめるんだけどね。イメージ湧いた」


「うーん、何となく」

 というか、委員長の技が鮮やかすぎて逆にイメージがわかない。

 しかも委員長が異空間移動を使えるようになったのは3日前の金曜日だよな。

 つまり練習できたのは土曜、日曜のみ。

 それでこの段階までもう使いこなしているのか。

 さすがというか何というか。


「他にも一撃必殺を狙うか継続的に相手に攻撃し続けるのか。何を狙うかでまた武器は変わるしね」

 俺は理解した。

 委員長の言っている事は正しい。

 説明も正しい。

 でも今までの色々な訓練の蓄積が凄すぎて参考にならない。

 俺は俺の座標軸で考えよう。

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