第73話 なかなかちょっと気恥ずかしい
さて、本日もこの時間が来てしまった。
「今日は秀美がお相手よ。優しくしてあげてね」
松戸達はそう言い残すと、水着に着替えて釣り道具も抱えて3人で出て行った。
特訓と聞いていたが遊びに行くようにしか見えないのは気のせいか。
まあそっち側を気にしてもしょうがない。
問題は俺達残され組だ。
固定ベッドに取り残された俺と委員長。
委員長とはこの4人の間で一番付き合いが多い。
しかも襲撃事件の時お互い恥ずかしい台詞を色々言ってしまっている。
なので2人と違い何か俺から声をかけられない。
何か妙に気恥ずかしい。
やっぱり前の2人とは違う感じで。
「ん、ごめんね佐貫。何か変なことさせちゃって」
委員長の方から声をかけてくれた。
でも、それを言うなら……
「むしろ変なことしているのは俺の方だろ。正直嫌じゃないか」
委員長はちょっと考えるように間を置いて、そして口を開く。
「ん、本音を言うとね。佐貫が他の子とこういう事をしているのはちょっと嫌かな。彼女でもないのに嫉妬ってのも余計な事だけど」
え、ちょっと待て。
その言葉はどういう意味だ。
「私が佐貫に命をもらった時の事、憶えているよね」
忘れる筈がない。最初に血を吸うきっかけになったあの事件。
「委員長が俺を助けてくれたんだろ、あの時は」
その結果委員長は死にかけた。
今でもその時感じた色々は忘れない。
「ん、それでもね。私は佐貫にだけは助かって欲しかったんだよ。私以上に」
おい待て。
この場でその台詞は不味い。
委員長、ちょっと顔を赤くしている。
きっと俺も同じだろう。
委員長はそのまま、ちょっと窓の外に目をやってから口を開く。
「でもね、あの3人の気持ちもそれぞれ何となくわかるんだ。
みんな佐貫にそれぞれの形で好意を持っている」
おいおいちょっと待て。
「俺にそんな持てる要素なんて無いぞ」
少なくとも俺の人生要素にモテは無かった。
委員長は頷く。
「佐貫は意識していないだろうけれどね。
その意識しないという事が普通は出来ないんだよ。
皆、この学校でも特殊過ぎる子ばかりだから」
とんでもない内容に俺の思考が追いついていない。
そして委員長は更に続ける。
「あの子達の気持ちも私と同じ。だからきっと同じ位わかるんだ。皆、特殊な人だけが通っているうちの学校の中でも更に特殊だから。
情報収集能力と指揮能力というこの学校の中でも特殊な能力故に特別扱のみらい。
普通の人間なのに想いと意思だけで全部超えてこの学校に辿り着いたユーノ。
普通の暮らしからある日突然特殊な世界へと迷い込んでしまった美久。
皆この学校の生徒にさえ馴染めずに浮いてしまった存在。
だからその辺を一切気にしない佐貫に引き寄せられたのは必然なんだよ。
事件とかが起こらなかったとしてもね」
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