第71話 腹が減っては戦は出来ぬ

 そして今日も放課後がやってくる。


「それじゃ今日も着替えとタオル持って集合ね。今日は4時集合でいいか」

「ん、わかった。佐貫も逃げるなよ」

「まあ逃げても捕まえられますけれど」

「同意」

「わくわく」


 昨日松戸の知識の一部を吸収した。

 だから逃げられない事はよくわかっている。

 というか松戸の能力、洒落にならないな。

 体力以外はほぼオールラウンダー。

 ぶっちゃけ俺に逃げ道は無い。


 仕方なく俺も着替えを用意し、楽な服装に着替えてエアストリームへ。

 既に綾瀬が到着していた。

 キッチンで何やら作業をしている。

「昨日は朝食を食べ損ねたらしいから」


 その配慮は大変ありがたい。

 確かに衝撃色々で忘れていたが昨日は朝食を食べ損なっていたんだった。


「先に食べるか」

「いや、皆を待っておくよ」

「わかった」

 綾瀬の料理なら期待できそうだ。

 その後に来る事態に務めて考えがいかないように楽しい事を考えよう。


「参考までに夕食は何の予定?」

「鶏照り焼き丼と棒々鶏サラダ」

 鶏虐殺メニューだな、それ。

 でもここの連中は大食いだしまあいいか。

 それに。


「美味しそうだな」

「そうだと嬉しい」

 そうしている間にも次々と皆さん到着。

 松戸がひょいとガス台の奥から大鍋を取って、ダイニング側のテーブル上に置いた鍋敷きの上に置く。


「ん、ユーノ随分腕力上がったんじゃ無い。その鍋重いでしょ」

「これも能力贈与の賜物ね。身体も大分健康体になったかな」

 そう言って松戸はその鍋の蓋を開ける。

 どうもそれはご飯を炊いていたらしい。

 確かにこの面子相手だと小さい炊飯器じゃ役に立たないからな。


 ところで松戸への昨日の能力授与と治療、上手く行っただろうか。

 実は気になったので昨晩の授業開始前に松戸の身体を天眼通でさっと見てみた。

 その時見た限りでは、身体上の問題はほぼ解決。

 少なくとも完全に健康体にはなっている。

 ただその分他の能力が落ちている可能性もある。

 何せ神への契約の代わりに渡した臓器等もあったようだし。


「松戸、能力の方は大丈夫か」

「少し減ったけれど、それを補う以上に色々貰ったしね。総合的に見れば能力は上昇したかな」

 ならいいけれど。


「私も色々出来るようになるのでしょうか、乞うご期待!わくわく」

 ああそうだった。

 それが待っているんだ。

 いや、みらいは確かに見た目可愛いよ。

 でもこの環境でそれは……


 いやいかん、その件については考えないようにしよう。

 まずは飯だ。


 松戸がラーメン用と思われる丼にご飯をがんがんに盛っている。

 そしてその上に綾瀬が鶏の照り焼きと焼いたシシトウを載せ、タレをかける。

 委員長がキッチン側でよそった味噌汁をテーブルに持ってくる。

 最後にでっかい皿に載った棒々鶏サラダをテーブル中心に置けば完成。


「それでは移動するね」

 と松戸が例によってエアストリームをいつもの南の島へと移動させる。

「いただきます」

 の唱和とともに朝食開始だ。

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