第68話 黒幕による解説です

 なお異空間方面の脱出口すら既に塞がれている。

 飛ぼうと思っても飛べないのだ。

 どうもこれは松戸の仕業らしい。

 少なくとも俺の空間操作能力では手が出ない。


「さて、佐貫君の予定を発表します。

 本日は私、松戸夕乃。明日はみらい。明後日が秀美、最後は美久の予定です」


 パフパフパフ、と変な擬音をみらいが入れる。


「そんな訳で、佐貫君をベッドにご案内~」


 委員長と綾瀬に捕まったまま、横歩きで後部のベッドルームへ。

 ご丁寧にベッドは洗ったばかりの白いシーツなんて掛けられている。

 おまけにベッドの横にはピンク色の花が生けてあったりする。

 やりすぎだろ色々。


「私達は外で特訓しているです」

「ん、逃げるなよ」

「同意」

 3人が消えていき、そして俺と松戸が残される。

 ベッドの上に。

 まあ、まだ2人とも腰掛けているだけだけれども。


「さて、色々の前に補足説明ね」

 松戸は急にそんな事を話し出す。


「これ全部、松戸が黒幕なんだろ、きっと」

 彼女は頷く。

「そうね。考えたのは私。まず理由を説明するね。

 8月の終わりに飛んできた存在、覚えているよね」


 忘れる訳はない。

 あの名前のない彼の飛来。

 神聖騎士団ヨーロッパ支部によって作られ、そしてその支部を壊滅させた彼。

 その圧倒的な力は今でも脅威として憶えている。


「あの存在は我々の敵とはならなかった。でももし同等の存在が敵として来たら、うちの学校で勝てると思う?」

 俺は首を横に振る。

 勝てる訳がない。

 存在が違いすぎる。

 ん、待てよ。


「松戸、何故お前がその事を知っているんだ」

 あれは事情聴取の上、脅威度が高すぎるとして教員以外には秘密とされた筈だ。

 状況を知っている俺や柿岡先輩、神立先輩にも箝口令が出ている。


「私も柿岡先輩の慧眼通と同じような能力があるのよ。厳密には私の能力ではなくて、私に力を貸してくれる神の御力なんだけれどね」

 つまり松戸も知ろうと思えば全て知る事が出来る訳か。

 なら綾瀬との事もわかるんだろうな。


「あと綾瀬の件は私がけしかけたの。料理を作りに行く事も迫ってみる事も。思ったより上手く行ったけれども一線は越えなかったね、残念」

 おい松戸。

 あの件もお前が黒幕か。


「まあ綾瀬の件は別として、今のままではあのレベルの脅威に対応できないのは明らかでしょ。そしてその脅威が迫っているのが明らかだとしたら?」

 えっ、どういう事だ。

「柿岡先輩に言われていない?いくつもの脅威が佐貫目がけて来ている話」

 あ、そうだった。

 最近平和すぎてそのくせ事件が多くて忘れていた。

 暴走車が何台も交差点に迫っているんだった。


「一つ目の脅威は神聖騎士団の潜伏侵攻部隊。それは無事倒したわ。でも次の脅威が迫っている。おそらく武闘大会の後それほどしないうちに」


 そうか。

 こいつも慧眼通並みの情報持ちだからそれがわかるのか。

 ならこの合宿の目的は武闘大会だけではない。

 松戸は俺の思考がわかったかのように頷く。


「そう、この訓練の目的は武闘大会じゃない。その先の敵と、更にその先の敵よ」

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