第67話 秘密特訓の内容は
そして現れた外の景色は見覚えがある。
俺にとっては悪夢の場所だ。
そう、あの何処か不明な南半球の無人島。
夏休みに合宿をやったあの場所である。
「さて、まずは特訓の前に講義から始めるよ」
松戸がそう言って立ち上がる。
おい、いきなり何だ。
何故ここに来たんだ。
そして講義とは。
でも誰も何も言わない。
なので俺も言い出せないままでいる。
「大会出場者の中で、他の組にない私達だけの武器って何でしょうか。はい佐貫君!」
いきなり指された。
しかも全く分からない。
でも松戸にはそんな俺の反応は予想内だったようだ。
「急に言われてもわからないよね。それに色々な答え方がある問い方だったし」
うんうん、松戸わかっているじゃないか。
そして松戸は更に続ける。
「私の思うところ私達だけの武器は2点。
ひとつは佐貫が持っている能力。
他人の能力を吸収複写する能力とそれを他人に分け与えることが出来る能力ね。
例えば秀美は佐貫の体力と治癒再生能力を持っている。
美久は更に秀美の格闘や術の知識も持っている。
これを使えば全員が全員の能力を使うことが出来る。能力に強弱はあるけれど少なくとも弱点は限りなく少なくなる。
これが私達だけの武器のひとつめ」
おい、松戸に綾瀬との事までばれているのか。
そう思っても勿論確かめる事など怖くて出来ない。
そして松戸の説明は更に続く。
「もうひとつは、みらいの能力」
「え、私ですかあ?」
守谷が意外そうな顔をする。
本人だけでなく俺も同感だ。
守谷には攻撃能力はほとんどない。
あるのは管制能力関連だけの筈だ。
「みらいの指揮管制能力は超一流よ。これが使いこなせればなまじの敵等相手じゃない。でも今の状態じゃ戦闘現場で生き残れないけれどね。
さて、みらいの管制能力を鍛えるのは別とします。
この2つの武器を有効に使うにはどうすればいいでしょうか」
あ、凄く嫌な予感がする。
俺の他人の能力を吸収複写する能力とそれを他人に分け与えることが出来る能力。
これを有効に使う方法とは。
まさか……
不意に両側から腕をがっちり固められる。
右側が委員長、左側が綾瀬。
俺は動きが取れない。
「まさか、俺にあれをさせようと言うんじゃ……」
「この車にはクイーンサイズのベッドがついているしね。道路上とかこたつの前よりはマシだと思うわ」
松戸、やっぱりお前全部知って……
「うへへへへ、成功したら空を飛んでみたいのです」
おいみらい、まさかお前まで知っているのか。
「ん、能力の有効活用の為にはしょうがないかな」
「同意」
おい、委員長も綾瀬まで……
俺は悟った。
この場に味方はいない。
「ごめんね。実は全員に事情を話して同意済みなの」
松戸がにっこりと笑う。
その笑顔は確かに魅力的だ。
きっと魂の契約を迫る悪魔ってこんな感じに魅力的なんだろうな。
そう思わせるほどに。
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