第65話 仕方が無いので戦力把握

「ん、今日中に研究会の名前を決めなければならない訳か」

「そして武闘大会への参加も決まってしまった訳ね」


 委員長と松戸の台詞が今の現状をまとめる。

 その前に俺は質問をひとつ。


「ところで昨年の高浜先輩の件って何ですか?」

 柿岡先輩が頷いて口を開く。


「まあ大体想像できると思うけれどね。

 昨年の夏、敵のひとつである『父と子と聖霊教会』東アジア支部が全滅するという事件があったんだ。

 関与していたのは当時2年の高浜と当時1年だった田中。

 で、新学期にこの2人が研究会を作ると学校側に申し出た。

 その時の条件が今と同じさ。武闘大会でそれなりの力を見せつけろ、と。

 結果2人で参戦して見事準優勝まで成し遂げ、お散歩クラブは成立した」


「今では2人ともお散歩クラブを離れてしまったみたいだけれどね。高浜先輩は引退したし、田中君は独立して別の研究会を作ったし」


 つまりは、まさか……


「ん、つまり武闘大会で準優勝以上しろという事かな」

 委員長がさらりと怖い事を言う。

「概ねそんな処だろうね。試合内容如何によってはそこまでしなくてもいいだろうと思うけれど」


「どうせ狙うなら優勝なのですよ!」

 みらい、そんなにハードルをあげないでくれ。


「そうよね。どうせ狙うなら」

 あ、松戸さんあなたもですか。

 綾瀬そこで頷くな!


「ん、確かに3年生は引退しているけれどね。でも今の2年生も充分に強いよ」

 委員長が比較的常識的な意見を言ってくれる。

「例えば内原先輩、堕天使系の指揮能力持ちの万能型よ。あとゆかり先輩の圧倒的な格闘戦能力と田中先輩の召喚魔法も脅威かな。

 他にも色々強い先輩は多いよ。結構皆能力を隠しているし」


「秀美、一番怖いのを忘れているよ」

 柿岡先輩がそんな怖い事を言う。


「ん、誰だろう。岩間先輩も強いけれど紫先輩程じゃないし、空間移動可能な先輩だとやはり内原先輩が一番強いし……」

 神立先輩がくすりと笑う。


「柿岡君の言っているのは三郷さんよ、違う?」

 三郷先輩?

 どこかで聞いたというか会ったような……あれ?


「あの指揮担当の三郷先輩なのですか?」

 みらいが口を開く。

「いつも演習や実戦で一緒にやっているですけれど、三郷先輩は戦闘能力無いですよ。腕力も常人の半分以下だし、補助具つけないと歩けないのです」


 そうなのか。

 座っている処しか見た事が無いのだけれど。

 でも柿岡先輩は頷く。


「その三郷さんだ。あの人単独では戦闘力は0だろう。でも誰か1人でもそれなりの力がある生徒と組めば、多分そこが優勝の最有力候補だ。

 ただ彼女の所属している小吉クラブは戦闘が得意な部員はいない。元々力が弱い小妖怪の互助会的な研究会だしね」


「でも三郷さんの力は強い人ほど認めているわ。だからあの子を勧誘できたら、もしくは彼女の助っ人に誰かが入ったら間違いなくそこが優勝候補ね。

 まあ見ればわかるわよ。三郷さんの本当の実力を」


「もし運悪く戦う事になったら、メンバーにかならずみらいさんを入れる事だな。勝負はみらいさんが三郷さんに何処まで迫れるかにかかっている」


 うん、みらいは戦闘能力は現状ほぼ0。

 という事は指揮能力がそれだけ戦闘結果に関わってくるという事か。

 でも俺には全く想像が出来ないのだけれど。

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