第60話 移動基地設置計画(1)

 夏休みが終わるのはあっという間だった。

 夏の終わりにイベントが多発してしまったおかげだ。


 授業終了後はいつものお茶会。

 人数は大分増えている。

 俺の他に委員長、綾瀬、松戸、守谷の4人。

 それに元からの部屋の主である柿岡先輩と神立先輩。

 計7名という陣容だ。


 ちなみに俺は柿岡先輩と顔を合わせるのが少々怖かった。

 何せ彼は天眼通よりさらに性能上の慧眼通持ち。

 おまけに委員長の保護者だ。

 最近の俺の悪行色々が見られてしまったら。

 そう思うと大変気まずい。


 でも柿岡先輩の能力からして見えてしまうものは隠しようがない。

 ただ全部自分の意思じゃない

 色々とまあ成り行き上そうなっただけだ。

 でもそれがシスコンの慧眼通持ちに通用するだろうか。

 実際事実そのものなのだが。


「そんな構える事無いよ。どうしても特異な能力持ちは集まってしまうから」

「うちの代は私の逆ハーレムだったもんね」


 幸いなことに俺の懸念は大先輩2人のその一言であっさり晴らされた。

 俺も安心して紅茶を頂くことにする。

 ほっとした後の紅茶が美味い。


「人数も増えたし、何なら専用の部室か何かをもらったら。私達ももう引退だしね」

「でも特に研究活動している訳じゃないし、2年生もいないですし」


「必要なのは人数と名目だけさ。高浜のお散歩クラブなんてあいつの口先だけでつくったような研究会だし。今こそ2年も1年もそこそこいるけどね」

 あんな恐ろしい誘い文句で研究会に入る奴の気が知れない。


 さて、この話もいいけれど実は他に聞いてみたい話がある。

 この学校が移転するという噂だ。

 現在は小学部、中学部、高等部それぞれ廃校の校舎を再利用している。


 でもこの体制だと敵の侵攻等があった場合に守りにくい。

 それに施設そのものも廃校になった位だから老朽化している。

 更に場所そのものが位相が異なるとはいえ街中なので、万が一大規模な戦闘による破壊等があった場合は通常世界側にも被害が呼ぶ可能性すらある。

 そんなこんなで昔から移転の噂はあったのだが、今度こそ本当らしい。

 少なくともクラスではもうその噂が広まっている。


「そういえば新校舎の噂が色々広まっていますが、何か情報がありますか」


 柿岡先輩はあっさり頷く。

「明日には発表すると聞いているよ。場所は飯農の山の方だって。場所が奥地になる代わりに防御も楽になるし校舎も広くなるみたいだよ」


 え、何でそんな事を知っている。

 そんな俺の内心を読んだように柿岡先輩は解説する。

「慧眼通持ちだとほっといていても勝手に情報が聞こえてくるんだよ」


 なるほどな。

 と、委員長が思いついたように言う。


「ん、どうせ研究会で部室作るんなら、部屋を借りるより電源付き土地借りてあのキャンピングカー停めたいな。あの方が多分豪華だし気持ちいいしきっと楽しいよ。お出かけも出来るし」


 おい委員長、あれは松戸家のだぞ。

「そんな申し訳ない事できないだろ。あれ日本で買うと中古の家族用マンションが優に買える値段するんだぞ」


「うちは大丈夫よ。日本に戻ってきてからほとんど使っていないから」

 あ、松戸さんがOK出してしまった。

 いいのか、本当に。


「ええと、参考までにどんなキャンピングカーか聞いていいかな」

 そして柿岡先輩が興味深そうに聞いてくる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る