第58話 君と食べよう食べられよう!(3)

 綾瀬てきは髪形を確認すると今度はこっちに近寄ってくる気配。

 集中だ!

 意識をネットに集中させろ!

 今日のプロ野球の予定は……


「佐貫一つ質問」

「何?」

 不意に綾瀬が後ろから抱き着く。

 濡れた髪と風呂上がりの熱い体。

 しっとり重い感触。


「色々工夫したが上手くいかない。やっぱり私は魅力ないのか」

 彼女は俺の耳元で囁くように続ける。


「合宿で私の水着でどきどきすると聞いてちょっと脈あるかと思った。

 まずは料理で気を引いてみた。ちょっとうまくいきかけたからこんな姿で誘ってみた。でも龍洋は目を逸らすだけでこっちを見てくれない。やっぱりこんな発育不良な体は魅力がないか」


「そんなことは無い!」

 後ろで綾瀬がびくっとする。

 しまった、ちょっと声が大きすぎた。


「魅力がないなんてそんなことは無い。むしろその逆。これでも男としての本能を必死に抑えている状態。だから無理させないでくれ」


「抑えないでいいって言ったら」

「自分で責任とれない事はしたくないし好きな子は大事にしたい」

 本当はただのヘタレなのだがそれは言わない。


「なら少しは期待していいのか」

「とりあえず充分魅力的だ。だから俺の忍耐力を試さないでくれ」

 完全に俺の本音だ。

 ふっと体が離れる感触。


 助かった、と思ったらまさか。

 こたつを押しのけて座った俺の前膝の間に強引に入り込んだ。

 俺と真向かいに密着するような体勢。

 ちなみに綾瀬はパン一で上は何もつけていない。

 小さくふくらんだ胸が丸見えだ。


「おい綾瀬、これは」

「期待していいなら証明。前に秀美にしたのと同じ事して欲しい」

 綾瀬は潤んだ目で俺を見つめる。

「私を食べてほしい。私をいっぱいいっぱい食べてその分佐貫を分けて欲しい」

 綾瀬はそう言って俺に抱き着く。


 すぐ目の前に綾瀬の首筋。

 あ、まずい。

 血を吸う前に押し倒してしまいそう。

 誘惑を必死にこらえ、綾瀬の首筋に口を近づける。


 甘い自分のじゃない体臭とともにかぷっと血を吸う態勢に。

 美味しいというより気持ちいい感覚。

 多分性的な快感と同じ種類の生理的な快感。

 綾瀬の口からも小さく声が漏れる。


 彼女はどんな感じなんだろう。

 自分の知らない気持ちいいものが体内に広がっていく快感。

 委員長の時とちょっと違うけど同じくらいに気持ちいい。

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