第51話 オリーブオイルのいい香り

「今回はハムとチーズと生野菜がメインのサンドイッチです。パンも具材も厳選したからちょっと味には自信あるわよ」


 いままでこの2人の料理に裏切られたことがない。

 よって今回もかなり期待。

 それにパンだけでも見るからに今までと違って美味しそうだ。


 いただきまーすと皆で唱和。

 次の瞬間我先にと手が伸びる。


 最初に手にしたのは分厚いハムとチーズの入ったサンドイッチ。

 かぶりつくとそれぞれが一体となって味と風味を主張してくる。

 材料は麦ですよと主張するパンと薄く塗られたバターとチーズのおだやかだがしっかりした塩味と分厚いハムの下品なまでの肉肉しさの主張がかみ合って。


 美味い。

 やばいくらいに美味い。

 某ハンバーガーとは比べるべくもない。

 今まで凄く美味いと思っていた某チェーン店の某ミラノサンドより美味しい。


 肉系サンドイッチ2つを本能にまかせて食べた後。

 主な具材は野菜だけに見えるサンドイッチが気になった。

 手をのばし、口へ運ぶ。


 至ってシンプルにパンと野菜の味だ。

 あ、ちょっとマスタードをきかせている。

 それに何か食欲をそそる奥深い香りが。

 何だろう。

 ちょっとブドウにも似た微妙に青臭くて魅力的な香り。


「それはサラダ代わり。生野菜をオリーブオイルであえた。あと粒マスタード入り」

 綾瀬が解説してくれる。

「このブドウみたいな香りは?」

「オリーブオイル。いいオリーブオイルはいい香りがする」

 そうか、オリーブオイルは本当はこんな香りがするのか。


 何かもう色々美味しい。

 明後日からいつもの食生活に戻れるか不安になる位に。

 皿が空になったらすぐにお代わりが出てくる。

 今回はかなり多めに作ったらしい。

 あっという間に3皿目完食。

 俺も動くのがちょいだるいかなと思う位食べたところで昼食は終了した。


「うーん、かなり多めに作って正解だったね」

「同意」

 料理人2人が頷く中。

 ごちそうさまの合図とともに浅瀬に横になった者一名。


『うーん、美味しかったですもう動けないです満足です……』

 守谷が念話でそんな事をほざいている。

 口に出して喋るのすら億劫だという事らしい。

 見ると上下の水着の間の腹が明らかに膨れている。

 大丈夫かお前。

 今の姿を見られたらファンが減るぞ。

 ファンがいるかどうかは知らないけれど。


「ん、みらい、行儀悪いよ」

『いいのです見られてこまる人もいないのです満足ですこの世の楽園で……ひゃあっ!』

 最後のは守谷の手等に残っていたパンくず狙いの小魚による感触のせいらしい。

 うーん楽しい。

 何か幸せな時間がゆっくり過ぎていく。

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