第50話 お買い物には何処行った?

 濡れたついでに泳いだり水掛け合ったり。

 いい加減疲れたので帰ってきて水着に着替え、濡れた服を干した。

 エアストリームの全面アルミボディは洋服を乾かすのにちょうどいい。

 屋根に干したズボンがキンキンに乾くころ。

 やっと買い物組が帰ってきた。


「ごめんね、時差忘れて開店時間間違えた。別の店を回った分時間かかっちゃった」

「でも買い物内容には満足」

 何処へ行ったんだろう、一体。

「レシートがドル表示だから後で円換算しておくね」

 という事はアメリカのどっかか。


「本当はストラスブールにお勧めのパン屋さんがあるんだけど、よく考えたら真夜中なんで開いてそうな場所で間に合わせちゃった」

 ストラスブールって何処だそれ?


「でもいいパン屋。スーパーも大きくて充実」

 まあ何となく時間がかかった理由がわかったので良しとしよう。

 綾瀬も満足そうだし。


「こっちも楽しかったんですよ。綺麗な水が湧く泉があって。後でまた皆で遊びに行きたいです」

「ん、確かにいい場所だったね、あそこ」

 2人とも満足しているようなのでそれも結構。

 ただああいうシーンは高校生男子にはちょっと厳しい。

 そうでなくとも結構この旅行時々厳しいのだが。

 女子に言えない健全な男子的事情で。


「これから準備すればちょうどお昼かな。ずっと魚だったしたまには他の系統も食べたいでしょ。用意するからちょっと待ってね」

 完全に2人が料理担当になっている。

 代わろうかと委員長や守谷も言ったのだが、『これも楽しいから』と却下された。

 確かにどっちも楽しそうにやっている。

 それに2人とも料理上手なので文句はない。


 準備完了までエアストリーム内立ち入り禁止。

 なので俺達3人は砂浜。

 守谷はさっきはしゃぎすぎてバッテリー切れっぽい。

 そして委員長と俺は寝不足。

 だからおとなしく砂浜のちょっと波が来る辺りで3人とも休憩。

 砂とか波の感触とかじりじり照り付ける太陽がすごく心地いい。


 完全に意識が落ちたところで、

『お昼ですよ~♪』

 とブロードキャスト目覚まし娘に起こされた。

 向こうで委員長もしぶしぶ体を起こしているのが見える。

 守谷は既に充電済みで元気いっぱいのようだ。

 やれやれ。


 いつの間にか綾瀬も松戸も水着に着替えている。

 松戸はあの挑発的な水着の上にパーカー姿。

 ちょっと安心。


「ちょっとお昼は場所と趣向を変えてみたよ。そこの丸が書いてあるところにそれぞれ立って」

 と松戸が指示するので俺達はそれぞれ砂に書かれた丸印のところに立つ。

「じゃあ昼食会場へご案内~」


 松戸の声で風景が一変した。

 目の前は見覚えある綺麗な泉。

 水中の浅い場所にガーデンテーブルとチェアが置かれている。

 足の感触がちょっと冷たくて気持ちいい。


「みらいの希望でこの場所を設定」

「ふふふふふ、やっぱりいいですよこの場所」

 確かにかなり雰囲気がいい。

 何かのCMにそのまま使えそうな位だ。

 綾瀬と松戸に促されて俺達は席に着く。

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