第49話 カメラさんも照明さんもいないけれど
「ん、危険そうな大型動物はいない。まあ蛇と虫くらいかな注意するの。幸い大型哺乳類がいないから蚊とか蚋とか蛭とかはいないみたいだけど、どうする」
「うーん、私、蛇や虫はやっぱり嫌だなあ。あと洞窟はないですか?」
「ん、見てみたけど洞窟はなさそうかな」
「残念、探検隊といったら洞窟なのですが」
どこの常識だそれは。
「じゃあいつもの浜辺に戻って、そこから川の上飛びながら遡上なのです。川を上るのも探検隊の定番なのです」
という事なのでさっきの浜辺へと下降し、そこから森の木々のちょっと上くらいの高さで川を遡り始める。
速度を上げるとすぐ終わってしまいそうなのでゆっくりと。
よく見ると木の根の張り方が奇妙だったりでかい貝が転がっていたり。
観察すると色々変わっていて結構楽しい。
委員長も結構楽しそうにあちこち見ながら飛んでいる。
俺の背後というか上から昭和の某有名探検隊パロディーの鼻歌が聞こえてくる。
守谷もご機嫌なようだ。
というか守谷なんでそんな歌知っている。
俺だってリアルに見た世代じゃ無いぞ。
年齢があわない。
川の水そのものはあまりきれいではない。
むしろ黄色く濁っている。
でもそれがジャングルクルーズ感を醸し出している。
やがて川にちょっとした段差があり、それを超えると水も澄んできれいになった。
と思ったら終点、小さな池だ。
目の前は崖。
水は池の中から湧いている様だ。
見る限り、冷たくて綺麗そうな感じの池だ。
池というより泉かな。
天眼通で見てみる。
危険そうな動植物は周りにない。
「降りてみる?」
「勿論です!」
とのことなのでゆっくりと水面近くまで降りる。
結構浅そうだ。
「う、冷た!くはないですね」
守谷が池の浅いところに着地。
「ん、でもやっぱりちょっと温度低めで気持ちいいかも」
委員長も着水している。
俺も飛行をやめて着水する。
確かに水は程よく温度が低くてそれなりに気持ちいい。
守谷が池の奥の深い方目指して歩いて行く。
あっという間に深くなり、水深が膝上位の高さになったところで。
守谷はずるっ、と足を滑らし尻もちをつく形でこけた。
「ん!」
「おい、大丈夫か」
俺と委員長が慌てて駆け寄る。
「ううー、こけちゃったです。でも結構気持ちいいです」
転んで後ろに手をついたまま守谷はそう言って笑った。
確かにこの水温だと気持ちいいかもしれない。
だが問題点は他にある。
俺はあえて守谷から目を逸らし池の別の方を見る。
今俺達は水着装備ではない。
上は襟のあるシャツに下は短パン。
守谷が言うところの『探検隊っぽい服装』をしている。
問題は守谷の上のシャツが薄手の白色だった事だ。
思い切り濡れた今、はっきりブラが見えるシースルー状態。
ふと守谷が完全に沈黙する。
俺が目を逸らした理由を理解したらしい。
しばしの静寂。
「うー、水着より露出少ないし気にしたら負けです」
開き直った。
「だから秀美も一緒に水に漬かるです」
ついでに委員長に襲い掛かった。
不意の思わぬ動きに委員長も対応できない。
よって2人とも頭から水中へ。
そうして出来上がったシースルー女子高生2名。
うん、こういう時は三十六計。
「あ、俺先に帰るからゆっくり遊んで来いよ」
俺はその場を穏便に立ち去ろうと決意した。
だが。
「ん、甘い!」
委員長、急速飛行に投げ技まで使いやがった。
結果俺は池の一番深そうな部分へと投げ飛ばされる。
飛行して対処する間もない。
俺の視界は水中へ。
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