第47話 のぞき、駄目、絶対!
出来るだけ静かに音を立てないように。
ゆっくり静かに動いてドアを開けて外へ。
夜なのに不思議なほど明るい。
月明かりと白い砂浜のせいだろうか。
月夜なのに星の瞬きもいつもより強い光を放っている気がする。
ふとある事を思いついて星空を観察してみる。
夏の大三角形が随分低い空に見えている。
北斗七星はどう探しても見当たらない。当然北極星も。
「完全に南半球だなこれは」
でも日本とそれほど時差がない感じだった。
という事は南太平洋のどこかだろうか?
まあ気持ちがいい場所なので文句は言わない。
よくこんな場所を見つけてきたなとほめてやりたい気分だ。
多分松戸綾瀬組が念入りに実査したんだろうけれど。
ふとトレーラーの方で何か気配がした。
扉が開いて誰か降りてくる。
委員長だ。
委員長はこっちを認めて歩いてくる。
「やっぱり寝れない?」
俺の問いに委員長は頷く。
「ん、あの後巨大アジフライを狙って巨大ネコが現れた。そしてにゃんこ大戦争が始まった。イラストと戦況入り実況中継で」
成程、それを真横でされたら眠れない。
「でもみらい、いつも頑張っているしね。特殊能力持ちだから普段から遠出も出来ないし行動も制約されているし。
ユーノがみらいのフォローするようになってやっと普通の買い物に出かけられるようになったんじゃないかな」
松戸、そんな事もしていたのか。
「松戸もいいとこあるじゃん」
委員長が頷く。
「ん、ユーノは本当はすごく色々気が付いて優しい人だよ。だからこそ暴走したんじゃないかな。あの白衣姿はきっと他の人と必要以上に仲良くならない為の楯だったんだと思う。今はもう必要はないんだろうけれど」
「それに今のチートな空間制御能力だろ」
あいつは本来ただの人間なのだ。
それも陰陽道とか魔術とか一切関わりない普通の人間。
「あれもきっと友達を救える可能性を探して、それこそ全てを犠牲にする位必死になって努力して得たんだと思う。あの子は全く普通の人間だし両親だって全くオカルトその他関係ない人たちだもん。いくら海外生活が長くて5か国語が自由だっていってもたった半年でこの学校に自力転校してくる位の能力を持つってのは普通じゃ絶対出来ない」
「確かにな」
どうすればそんな事が出来るのか、俺には方法すら思いつかない。
きっと才能と優しさとそれゆえの絶望の深さと努力と環境。
全てが合わさった上での奇跡なんだろう。
「ん、惚れた?あのボディだし」
「うーん、あれ位見事だとむしろ逆に平気かな」
「興奮しない?」
「興奮って言い方は悪いけど。むしろ綾瀬の水着のほうがいけないもの見ている気がして落ち着かない」
ふとその時、後ろでかすかに気配が動いたのに俺は気づいた。
「ん、佐貫はロリコンだったと」
また気配が少し動いた。
「決めつけ反対!」
そう言いつつ委員長の方を見る。
委員長が小さく頷く。気づいているようだ。
ちょうどいい大きさの流木があった。
委員長が何気なくそれを手に取って、
ノーモーションで投擲した。
パシン、と何かが木の枝を弾く。
「ひどいじゃないの。今の当たったら怪我するよう」
「同意」
大小の空間歪曲コンビが岩陰から現れた。
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