第46話 念話の寝言は迷惑です!

 晩飯は豪華だった。


 昼とは変わって和風。

 アジ出汁で炊いてアジの身が入った炊き込み御飯や様々な刺身盛り合わせ、アジのなめろうにアジ入り酢の物にアジ出汁冷や汁という感じだ。


 アジが大きかったためアジのメニューが多いが、他の魚も色々だ。

 刺身だけでもバリエーション豊富で飽きない。

 しかも美味い。

 新鮮なせいかそれぞれがすごく美味い。

 アジ炊き込み御飯に刺身になめろうでがつがつ食べるともうたまらない。


 ちなみに女性陣4人とも結構食べるのが今回明らかになった。

 なにせアジ炊き込み御飯、大鍋で5合以上炊いていた筈だ。

 でも俺がお代わりする前に空になっている。

 どいつもこいつも細いのにどこに消えているんだろう。

 松戸あたりなら本気で異空間に消しそうだが。


 これだけおかずの点数があっても、巨大アジの半身分も使っていないらしい。

 残りは明日以降だ。

 なお釣れた同種のアジの小さめの1匹は松戸家にお土産代わりにやったとの事。

 まあこんなに山ほど毎日は食べきれないだろうし正しいと思う。


 残りについては、

「大きい魚はちょっと間をおくとまた味が変わって美味しいよ。歯ごたえはなくなるけど柔らかくなって味も旨みが増してくるの」

 と松戸が言っていたので皆で楽しみにしている。


 片付けしてたら外はもう真っ暗。

 テーブル外して2つ目のベッドを作る。

 ここで2人、後ろの常設ベッドで2人、長椅子で1人で5人寝れるらしい。


「何なら秀美と2人で寝る?」

 との松戸の台詞は全力で否定。

 結局ベッドの組み合わせは常設ベッドが松戸と綾瀬、仮設2人用が委員長と守谷、長椅子が俺という事になった。

 なおこの組み合わせに深い意味はない。

 大きい人とは小さい人、というようにベッドの面積を有効活用した結果だ。


 電気バッテリーがもったいないとの事でさっさと就寝時間。

 エアコンはつけていないが夜風が充分に涼しくて気持ちいい。

 大型哺乳類がいない小さな島のせいか蚊もいないので窓全開でも大丈夫。

 昼間の疲れで心地よく……と意識が遠のきかけた時。


『アジの開き、巨大アジの開き。』

 何だ今の。


『新聞広げた大きさのアジの開き。うーん満足ですうふっ。』

 間違いない。空耳というか空念話耳ではない、これは。


 薄目を開けて頭の上方向にいる声の主の方を見る。

 気配を察してこっちを見た委員長と目が合う。

「今の」

「うん、みらい完全に寝てる。多分念話の寝言」

 ブロードキャスト寝言か。

 何と迷惑な。


 でも本人に悪意は無い。

 わざわざ起こして怒るのも何だし対策するにも耳栓じゃ意味ないし。

 諦めてまた寝ることにする。

 幸い寝言も聞こえなくなった。

 うーん、意識が遠くなりかけた時。


『うーん、巨大アジフライ、食べきれない。猫の手借りたいです。』

 今度は妙に漫画チックなイメージイラスト入り念話だ。

 しかも守谷、そのイラスト猫じゃなくてギコだ。

 貴様は昔の2ちゃんネラーか。


 ブシュー、っと委員長が噴き出すのをこらえた気配。

 それが俺を余計に刺激する。

 駄目だこれは、眠れん!

 こっちの寝入りばなを的確に襲撃してきやがる。


「ごめん、ちょっと外行って来る」

 俺は委員長に小声で告げて起き上がった。

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