第45話 珊瑚礁クルーズ&食料調達

 そんな訳で俺も不平は言わずにボートを引っ張る。

 目にも青いサンゴ礁上を低空飛行。

 海風がなかなか気持ちいい。


 後ろでは守谷と委員長がはしゃいでいる。

 ほんの2分程度で予定地点。

 周りをサンゴ礁に囲われたそこだけ水深が深い場所に到着する。


「ねえここ凄く綺麗なんですが、私ちょっと飛び込んでみていいですか」

「ん、やめた方がいいかな。ここサメいるよ」

「え、じゃあボートに乗っているけど大丈夫なんですか」

「ボートなら大丈夫よ。でも海面でばちゃばちゃ泳いでいるとサメが寄ってきたりするらしいわ」


 そんな会話の中、綾瀬は無言で仕掛けを深場に落とす。

 今度の仕掛けは松戸が選んだものだ。

 内容は太目のハリスと80号の重いおもり。

 途中2本の枝に小さめの疑似餌付の針が結び付けられている。

 作戦ではその疑似餌でまず小さめの魚を釣る。次にその魚をそのまま餌にして大きい魚を釣ろうというもの。


「最初は5メートル位でゆっくり上下させて」

 と松戸の指示に忠実に綾瀬がリールと竿を操作している。

 と竿先が明らかに不自然に動いた。


「良し、それじゃあゆっくりと糸を出して沈めて。ここだと30位まで沈めればいいかな。大きいのは深い層にいるから」

 1メートルごとに糸の色が変わるのでそれを数えれば深さがわかる。

 リールにもメーターがついているし。


「ん、随分と簡単に釣れるのね」

「魚がすれていないからね。でもお楽しみはこれからよ」

 松戸がにやりと笑うとほぼ同時に、竿が大きく動いた。


 引っ張られ動きそうになる綾瀬を、松戸が抱きかかえる。

「佐貫はそのまま今の場所を維持して。

 綾瀬、糸が引っ張られている時はそのままでいい。

 でも少しでも緩んだら思い切り巻き上げて。

 他の人は動かないでね。場合によってはこのボートでも不安定になる位引くから」


 俺は空中で位置はそのままに綾瀬の方を見る。

 綾瀬の小さな体が時に後ろの海面に引きこまれそうになるのを松戸が長い脚でボートの出っ張りに足を引っかけて支えている。


 しかし俺が引っ張っていないとボートごと引っ張られそうな勢いだ。

 一体どんな魚がかかっているんだろう。

 様子から相当な大物だとは思うけれど。


 緊迫した時間の後、松戸がたも網で海面から上げたのは、新聞1面分位の面積がある巨大な銀色の魚だった。

 形は鯛に似ているが雰囲気はブリとかそういう魚に近い。何だこれ。


「松戸、その魚は」

「ギンガメアジの一種。ロウニンアジか何か。うーん、これ食べれば美味しいんだけどたまにシガテラ毒あるんだよね」

「ん、天眼通で見たら大丈夫だって」

 委員長が判定してくれる。


「よっしゃ、じゃあまず一匹」

 松戸はそう言って、巨大魚を何処へともなく消した。

「あれ、ユーノどこへお魚を入れたの」

「とりあえず実家の魚用冷凍冷蔵庫にしまった。今は何も入っていないみたいだし、血やうろこなんかが飛び散っても問題ないから」

 松戸家は色々装備が充実している様だ。

 そしてつくづく不憫だ。


「さて、もう少し釣りたいけれど、次にやりたい人いるかな」

「はいはい私です」

 守谷が志願する。

 結局様々な魚を綾瀬、守谷、委員長で釣りあげた。

 毒も問題なしとのことで全部キープ。


 帰ってきたら太陽はだいぶ傾き日差しが斜めになっていた。

 ここからは綾瀬と松戸のお料理タイムとのこと。

 なので、俺を含む3人はトレーラーの思い思いの場所で休憩に入る。

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