第41話 夏の予定は強制参加
後ろで行われている会議に強制的に参加させられる。
「で、場所はどこの予定。日程は?」
「夏休み開始から2泊3日、場所はグーグルアースで適当な無人島を検索中」
何だそりゃ。
「ん、どうせならプライベートビーチを思い切り満喫!ってやってみたいじゃない。美久とユーノいれば移動手段考えなくていいし」
「施設とか食事とか宿とかは?」
「ユーノの家のキャンピングカー貸してくれるって。トレーラー部分だけだから自走できないけれど、発電機は使えるし冷暖房調理器具完備だよ」
「うちの親に燃料満タンで貸してくれるよう交渉したら大丈夫だって。やっと友達と遊ぶなんて普通のことしてくれるようになったって喜んでいたわ」
松戸の親がすごく不憫だ。
勝手に妖怪学校に転校されたあげくにこの扱いとは。
そんな俺の思いと関係なく話は進む。
「ん、どうせならある程度食事は現地調達ってどうかな。主食と調味料は持っていくとして」
「それでは釣り竿や網や銛も追加ですか。ユーノさん在庫ありますか」
「大丈夫よ。親の趣味でアウトドア道具大体何でもあるから。なければ買わせるし」
守谷が『必要な道具』と色々メモを書いている。
そして松戸の親、何かますます不憫だ。
「そういう訳で明日の授業前に待ち合わせて水着買いに行きます。だから佐貫君も是非一緒にどうですか」
守谷がとんでもない提案をしてきた。
「いい。自分の位あるし」
条件反射で拒絶する。
本当は海パンなんて持っていないが、普通の短パンでも大丈夫だろう。
そんな姦しそうな売り場に同行なんてとんでもない。
その場にいるだけでいたたまれない思いをするのは確実だ。
それに女性のそういう買い物って長いと聞いているし。
「ユーノさんと美久さんが向こうの街に連れて行ってくれるいい機会なのですよ」
確かにこいつらと行けばゲートを通らず普通の街に行ける。
瞬間移動能力が無い人間は簡単には普通の空間には行けない。
学校のある空間と通常空間との往来にはゲートと呼ばれる場所を通る必要がある。
ゲートとは空間が自然に歪んでいる地点で、困った事に大体がオカルト発生地帯。
首無しライダーが走る緑川峠とか、武家の怨霊が出る九王子城跡とか。
しかも一番近いところで7キロ位先だ。
でも綾瀬や松戸は瞬間移動能力持ち。
通常空間でも異空間でも自由自在だ。
だからこの機会に買い物でも、と思うかもしれない。
でもそれはもう少しましな機会にした方がいいだろう。
何せ嫌な予感バリバリだ。
「佐貫は委員長の水着を確認したくないのか」
綾瀬がとんでもない事を言う。
全力で首を横に振る。
「俺と委員長はそういう仲じゃない!」
「あれ、そうかしら」
松戸が怪しいぞ、という感じでそう言うけれど誤解だ。
あれは単にその場の成り行きという奴で。
委員長、黙っていないでお前も少しは否定しろ。
そう言えば前回の俺と委員長が倒れていた件。
あれは何とか変な噂にならずに済んだ。
関係者一同がとりあえず黙っていてくれたからである。
確かにそれには一応感謝はしている。
でもその関係者が目の前の4人というのは不安しか無い。
「いい。とにかく水着の買い物はいい。必要な食料等の買い出しにはつき合うから」
そう言って必死にお断りする。
「ん、そっか。じゃあ明日の水着買い出しは4人だね」
どうやら災難の第一弾は無事通過したようだ。
思わず心から一息つく。
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