第4章 夏だ!水着だ!南国だ!

第40話 姦しき計画立案中

 7月18日火曜日。

 夜食後の夜休み。

 日程的には無事期末テストも乗り切り、あとは休み待ち。

 既に教室内は夏休みの話題で浮ついた雰囲気だ。

 実家へ帰る派とか旅行派とかまあ色々。


 しかし俺には全く関係ない。

 実家も俺以外誰もいない荒れたマンションの部屋。

 研究会等にも籍を置いていないので合宿等の予定もない。


 寮の部屋でのんびり漫画でも読んでPCにでも向かっていよう。

 そうしていればいつの間にか時間なんて過ぎる。

 なにせ元ヒキニート。

 無駄な時間の使い方は心得ている。


 そんな訳でクラス内の喧騒を全く気にせずに漫画雑誌を読んでいた。

 なのに突如後ろから声を掛けられた。


「佐貫君夏休み、何か予定入ってますでしょうか?」

 後ろを見ると、女子4人が何やらタブレットや地図を広げて色々作業をしていた。

 今声をかけてきたのは守谷みらい。

 あの戦闘指揮担当のみらいちゃんだ。


「寮で有意義に無為な時間を過ごす予定」

「ん、それ予定なしっていう事じゃない?」

「同意」

「私もそう聞き取れたなあ」

 それぞれ返答が返ってくる。


 ちなみに今のは委員長、綾瀬、松戸だ。

 つまりあぶれ組一同である。

 男子の間では地雷扱いされている面々だ。


 別に見てくれが悪いわけではない。

 守谷はまあ、見てくれだけはそのままで大丈夫。

 他については、

  ○ 委員長は眼鏡を外す。わざとらしいセーラー服も却下

  ○ 綾瀬はわざとらしく目線を隠している前髪を上げる

  ○ 松戸はまず白衣を何とかする

等、ちょっとだけ工夫が必要。

 でもそれだけで充分美少女として4人とも通用すると思う。


 ただこいつら、まあ色々と問題あり物件なのだ。

  ○ 委員長はが敬遠されているのは能力と腕力のせい

  ○ 松戸は白衣と成績と言動全てで変人との評価済

  ○ 守谷は前に某男子に告られた時にテンパって状況を念話で

   学校中に実況中継してしまった前科持ち

 綾瀬はこの中ではまあまともか。

 単に俺や委員長や松戸とよくつるんでいるだけで。


 怖いモノ知らずのこのクラスの男子もこいつらには近寄ってこない。

 こいつらもそんな事を気にしている様子はまるでないけれど。


「佐貫君夏休み、どこか行きたいなとか思っていませんですか?

 例えば海とか海とか海とか海とか?」


「海しかないのかよ!」

 しまった、条件反射的にノってしまった。

 そう思った時には遅かった。


「夏だしね、やっぱり海でバカンスよね」

「ん、たまには気分転換もいいかも」

「砂浜の遠浅希望」

「夏なんだから暑さを楽しみたいです」

 囲まれた。


 あ、まずい。

 視界の端で数少ない俺のダベり友達、怖いもの知らずで有名な虎男の勝田君が、

「さようなら佐貫君、君の尊い犠牲は忘れないよ」

って顔でこっちを見てやがる。

 しかも小さく横に手を振ってさよならしてやがる。

 奴らの予定は湘南ビーチナンパ大作戦らしいから参加する気は無いけどな。


「俺は吸血鬼の血統で直射日光に弱い。だから海は駄目なの!」

「ん、今までそんな素振り見えなかったけどな」

「苦手克服も必要」

「ちょっと気分悪くなってもみんないますから大丈夫です」

「世の中あきらめも肝心よね」


 俺の異議は聞いてくれないようだ。

 諦めて前向きに考えようか。


 美少女4人と夏のアバンチュールだ!

 お相手は

  ○ 肉体言語使い

  ○ 実質中学生

  ○ 研究者系変人

  ○ ネィティブサラウンドスピーカー


 あ、駄目だ。楽しい未来が思い浮かばない。

 そう思ったところで首筋をいつもの打撃が襲う。

「ん、人生諦めが肝心よ、ね」

 はいはいわかりましたよ委員長サマ。

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