第39話 委員長も吸血鬼も勝てない攻撃
「そうだね。さしあたって大変なのは明日の学校かな」
「同意」
不意にこの場にいない筈の声が2人分聞こえた。
俺も委員長も思わず声の方へ振りかえる。
見覚えのある2人が体育館との渡り廊下の屋根に腰掛けていた。
片方は一見中学生にも見える小型小柄。
もう片方は長身白衣だ。
こっちが2人を確認したのを認めた次の瞬間に俺達の目の前に出現する。
「何でここに」
一応言い訳は聞いておこう。
「意識さえしていれば同じ空間に起きた出来事をリアルタイムで把握できる。佐貫が保健室を出たのがわかった」
「この学校の周辺は安全のため見張っているからね。この通り」
松戸の背後で見覚えあるドローンが上下したのが見えた。
「それで今回の目的は?」
「忠告と興味と出歯亀根性よ」
松戸が変な単語を口に出す。
「だってあんなにアツアツな念話の後の再会だしね、気になるじゃないの。あの『私を食べて』とかの後だしさ」
え、まさかあのやりとり……
松戸がニヤニヤしながら解説する。
「念話は声より遠くから聞こえるんだよね。私にも聞こえたからみらいちゃんとか遠隔通話能力がある人ならもう全部聞こえているわよ、あれ」
委員長の顔が真っ赤になる。
「少なくとも私とユーノ、あとみらいには聞こえた筈」
綾瀬までそんなダメ押しをしてくる。
ちなみにユーノというのは松戸の名前だ。松戸夕乃。
「あと神立先輩はキャッキャ喜んだり恥ずかしがったりしていたね。柿岡先輩は逆に渋い顔していたかなあ」
おいおい。
その2人に知られるのはかなり不味い事態だぞ。
明日どんな顔をしてお茶会に行けばいいんだ。
特にシスコンの柿岡先輩にどんな目にあわされることか……
「ちなみに私達以外でまっさきに駆けつけたのは柿岡先輩と神立先輩の2人だからね。それと2人が連れてきた馬橋先生」
「発見状況も悪かった」
綾瀬の言葉に松戸が頷く。
「あれはなかなかスキャンダラスな格好だったわよね。何せ抱きしめてディープキスして失神している現場でしょ。秀美は抱かれて恍惚としているし。5人で保健室に運んできたけれどさ、他に目撃者が無かったとは言えないなあ」
松戸!何かお前完全に性格変わっているぞ!
と思考を逃がしても現実は逃げてくれない。
「という訳で佐貫君に質問。秀美ちゃんのあのアツアツな告白を受けてどうでしたでしょうか。今の気持ちと今後の抱負をお聞かせください」
松戸はぐいぐい攻めてくる。
こうなったら奥の手。三十六計逃げるにしかず。
と思った瞬間、退路を綾瀬に遮られる。
「逃亡不許可。でも駆け落ちなら面白いから許してもいい」
綾瀬、お前もそんな性格だったか?
「私と美久ちゃんの能力を知っていれば、逃げられるかどうかはわかるよね」
松戸はそう言ってにやりと笑う。
唯一の味方である委員長は顔を赤くしてうつむいているだけだ。
吸血鬼の戦闘能力もここでは役に立たない。
頼む、誰か、助けてくれ!
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