第36話 新能力はぶっつけ本番
その能力とは相手の血を吸う能力のちょうど反対の能力。
自分の力を相手に分け与える能力だ。
あまりやり過ぎると相手は俺の単なる奴隷になるが、ある程度までなら俺の体力や能力を分け与える事が出来る。
例えば治癒能力とか。
今、委員長を吸血したのがきっかけでその能力が目覚めた。
そして俺は気づく。
この能力なら委員長を助けられる。
方法はもう、俺の脳裏に既にある。
俺は吸血を中止し、口を離す。
『ん、何。せっかく気持ちよかったのに』
『悪いな委員長。最後まで思い通りにさせる気はない』
そう俺は委員長に告げて、そして次の瞬間委員長の唇を奪う。
『ん、んんんんん、何を……』
問答無用だ。
唇から唇写しで、俺の力を委員長に注ぎ込む。
委員長もすぐに抵抗をやめて、おとなしくなった。
委員長へと順調に力が送られているのを確認しつつ、俺は思う。
さて、これからが問題だ、と。
委員長の身体、よく生きていたなと思う位にボロボロになっている。
槍のようなもので刺された跡が何カ所もある。
右手に至ってはもう原型をとどめていない。
足も似たような状態だ。
要は無事なのは首から上だけ。
でもまだ生きている。
だから可能性はある。
これを全部修復して、かつ委員長の体力が回復するまで俺の体力が持てば。
勿論持たない場合は双方共倒れ、って訳だけれども。
いいじゃないか、上等だ!
どうせ委員長に助けられたんだ。
だったら逆に委員長を助けるのに全部使って何が悪い!
俺は全力で委員長に力を送り続け……
◇◇◇
ドラマや小説の中でよくある話。
目を開けたら白い天井でした。
今の俺が体験しているのもそれだった。
場所は何処かはすぐわかる。
ここは学校の保健室だ。
周りに貼ってあるポスターで一目瞭然。
そして視界の端に向こう側を向いて事務机に向かっている人物でも。
お世話になったのは初めてだが視聴覚室でついさっき会ったばかりだ。
学校医の馬橋先生。
見かけは20代後半のゆるふわOL系。
でも噂では校長より年上でこの学校最年長との事だ。
「あら、意識が戻ったようね」
馬橋先生はデスクワークをしながらこっちを見ずに言う。
「ええ。委員長は」
ふっ、と馬橋先生が笑った気配。
「柏さんならとっくに全快したわよ。佐貫君が目覚めるまでいるって煩いから叩き出した。ついでに様子を伺っていたクラスメイトは全員本日出入禁止。うふ、好かれてるわね、皆に」
何やら余分な情報もあるが気にしてはいけない。
「じゃあ委員長は無事なんだな。怪我とかは」
「大丈夫。ちゃんと傷も全部塞がっています。さすが吸血鬼の再生能力ね」
あ、何か色々気づかれているような。
さすが学校最年長(噂)。
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