第32話 武装学校異常なし
『敵車両全台撃破、確認しました。敵残存、術者2。いずれも野塩峠方向へ逃走開始』
「手応えがなさ過ぎますね」
馬橋先生がそう呟く。
「ああ、これだけとは思えない」
校長がそう応じるとともにみらいがまた指示を出す。
『避難誘導中の高浜先輩応答願います』
「ん、みらいちゃんや三郷先輩は校長と能力でリンクを張っているの。思考速度で指示がやりとり出来る訳」
委員長が解説してくれる。
『高浜先輩コンタクト成功』
これはみらいの隣の三郷先輩だ。
『高浜先輩に指令です。原罪の避難誘導を引き継ぎ次第、敵の撃破ポイントの偵察に向かって下さい。術式展開の恐れがあります』
「高浜先輩は変人だけれど空間術式については先生方並みかそれ以上の知識があるわ。瞬間移動も可能だし。だから偵察をお願いしたんだと思う」
なるほどな。
委員長が解説してくれるので色々と助かる。
俺1人なら訳がわからないところだ。
しばらくして今度は知らない男の声。
『高浜だ。儀典術式特有のゆがみを確認した。おそらくティクン・オーラムの儀式かその発展系統だ。消していいか』
『指揮所了解、消去願います。宝物倉庫の使用許可も出ました』
『高浜了解。聖釘を6本借りる』
そこで声は途絶える。
「ティク何とかって何だ?」
「ん、ごめん、それは私もわからない」
委員長でもわからない事があるのか。
なら俺でもわからないな。
そう思ったら後ろから声がした。
「ティクン・オーラムの儀式。かつて17世紀の偽メシア、サバタイ派が開発したとされる儀式よ。イスラエル12氏族代表を犠牲にして世界を書き換える内容の。
ティクン・オーラムとは本来は、悪行をやめ善行を行うことによりこの世界を修復し神の祝福に満ちた世界を取り戻そう、という意味なんだけれどね」
「実際はこの学校のある空間を浄化と称して崩壊させようという事だ。まあ高浜君なら解除くらい余裕で出来るだろうけれどな」
馬橋先生と校長が説明してくれた。
ここにいる皆に説明しようという意図があったのかもしれない。
『高浜から指揮所。儀典術式は無効化した。他に仕掛け等は見当たらない』
『了解しました』
『それでは非常事態措置は解除致します。繰り返します。非常事態措置は解除致します。なお、本日の授業にあっては小、中、高等部それぞれ休校と致します。本日は休校です』
「おわり?」
「ん、そうだね」
委員長はそう言って立ち上がる。
「お疲れ様でした」
そう挨拶して階段を下へ。
「あれ、上に戻るんじゃないのか」
「ん、お兄とか神立先輩は当分戻ってこないよ。多分今回の侵攻についてのミーティングがあるから。それに今日は学校が休みでしょ。思い切りよく訓練できるね」
えっ、今聞きたくない事を聞いたような気がしたけれど……
「ん、今日みたいな機会があるとわかるでしょ。訓練は大切。まあ実戦部隊は射撃以外は出なかったみたいだけれどね。という訳で早く着替えてきて」
えっ、やっぱり……
「俺は吸血鬼だから日の出以降は苦手なんだけれど」
「ん、ハイブリッドだから大丈夫だって言っていたわよね」
ああ……
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