第31話 銃撃部隊戦闘開始
「ん、みらいちゃんだよ、うちのクラスの。あの子は広範囲念話とか広域情報処理能力を持っているの。だからここで指揮管制をやっている訳。隣の三郷先輩もそう」
それって何の妖怪なんだろう。
でもまあそれは後回しか。
馬橋先生がこちらにやってくる。
「松戸さんと綾瀬さん。2人とも瞬間移動は使えるわよね」
「はい」
綾瀬も頷く。
「じゃあこっちの避難活動を手伝ってくれない。放課後だから児童や生徒が散らばっちゃっているの。指定要員だけでは間に合わない可能性があるから。行動や座標はその都度指示するわ」
「わかりました」
綾瀬も頷く。
「じゃあお願い。早速でごめんね」
「大丈夫です」
松戸のその言葉とともに綾瀬、松戸とも姿を消した。
何かもう、凄いな。
「馬橋先生はまあ綾瀬と似たようなものね。ただ経験値が大分違うから見るだけで相手の能力を判断したりも出来る。
今はここに招集した生徒を含め高校全体の人員把握をやっているわ。多分体育館の方にも分身を出している筈よ。どっちが本体かはよくわからないけれど」
委員長の説明で大体の様子はわかる。
『銃撃部隊1準備完了です。配置の重機関銃2。指示願います』
お、これは神立先輩の声だな。
『銃撃部隊1、了解です。目標は谷戸入口から都道20号線に入りました。現在20号線を東へ40キロで走行中。野塩街道ポイントBにて射撃願います』
「神立先輩は風を操る妖術を使えるから銃の弾をその都度位置修正をかけて当てる事が出来るの。今は狐の後輩と一緒に屋上で重機関銃を構えている筈よ」
「そんな武器までこの学校にはあるのか」
おいおい、武装学校かよ。
「ん、でもうちの装備だとM2までだよ。それ以上強力な装備はさすがに自衛隊も貸与してくれない。それに敵も化け物が多いから銃弾を避けたりもするしね。結局格闘戦になる事も多いかな」
おいおいおい。
でもまあ、確かにこっちの中身も化け物だらけだしな。
確か担任の取手先生も比喩ではなく鬼だと言っていたし。
ん、待てよ。
「そういえば敵について聞いていなかったな」
委員長は頷いた。
「ん、そうだね。色々いるんだけれど、今回の敵は神聖騎士団。昔の十字軍の
神が作られた正しい人間以外の存在は悪魔だとして、この学校にいるような存在を敵視している訳」
「要は狂信者みたいなものか」
「ん、みたいというかそのものね。ただ戦力としてはちょっと厄介かな。原罪なき者とかもいるし」
そう言えばさっき原罪なんちゃらも聞いたな。
「その原罪なんとかって、何だ」
「ん、原罪なき者よ。要は狂信者の中から希望者を募って術式で人体改造した存在。
外見は人間なんだけれど人間としての自我も記憶も意識も全て失っちゃっている。単に自分達の敵を滅するだけの存在。ただ強いよ。単なる格闘戦だけなら私でも1対1で勝てるかどうか」
何だよそれ。
「めちゃくちゃ強いじゃないか」
「ん、でも先生方とかお兄とか神立先輩なら敵じゃないよ。それに自我がない分動きが単純だし。ただ数が多いし術者と組まれると厄介かな。
『まもなく銃撃目標地点』
『了解』
その返事の僅かに後。
連続した轟音とともに少し建物が揺れたような気がした。
窓ガラスがミシミシ音を立てている。
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