第3章 武装学校防衛隊

第30話 それは警報音から始まった

 7月半ばの放課後。

 いつもの狐と狸先輩の部屋。

 例によってまったりとお茶会中だ。

 ただ前と違って面子が1名増えている。

 他でもない松戸だ。


 何故こうなったのかは今考えても良くわからない。

 綾瀬と松戸が何か仲良くなって、そしてこうなったとしか言い様がない。

 委員長はもとより狐狸大先輩も普通に自然に受け入れてしまっている。  

 まあ俺も文句を言う気は無いのだけれど。

 なお松戸の白衣姿は相変わらずだ。

 もう見慣れたから別にいいけれども。


 最近は綾瀬や松戸がおやつの差し入れを交互に追加で持ってくる。

 これが実は結構美味しい。

 松戸はカップケーキとかマフィンとかスコーンとか焼菓子関係。

 綾瀬はプリンとかタルトとかまあ色々だ。

 どっちも手作りだが結構美味しい。

 まったく訓練に行きたくなくなるように後を引く美味しさだ。


 本日は綾瀬作の水ようかんをいただいていた、その時だった。

  ウー、ウー、ウー……

 明らかに不吉な音のサイレンが鳴り響き始めた。

 ふっとテーブルを囲む面子の表情が変わる。


「先行っているね」

 その言葉と同時に神立先輩と柿岡先輩の姿が消えた。

 何処かへ瞬間移動したらしい。

 移動間際に食べたのか柿岡先輩の分の水ようかんの皿が空になっている。

 さすがデブ。


「ん、私達も行くよ」

 委員長が立ち上がった。

 そのまま委員長に言われるがままについていく。


「今のは」

「敵襲のサイレン。最近は滅多に鳴らなかったんだけど」

 小走りに廊下を走りながら委員長が説明する。

「こういう学校だから狂信的な団体とか軍備拡大を目論む勢力とかが襲撃してくる事がたまにあるの。でも最近は3年前に小規模なのが1回あったきりなんだけれどね」


「それで何処へ向かっているんだ」

「指揮所。普段は視聴覚室として使っている3階の部屋よ。

 本当は生徒は体育館に集合するんだけれど、いざという時に備えてある程度以上戦闘力がある生徒が指定戦闘補助員に指定されているの。

 お兄や神立先輩は勿論指定補助員だし私もそう」

「俺達は」

「3人ともそれなりの実力はあるでしょ。だから取り敢えず私の独断で連れて行く」


 階段を走り降りるともう視聴覚室は近い。

 視聴覚室に入ると既に十数名の生徒が集まっている。

 そして教師も数名来ているようだ。

 校長の姿も見える。


「あれ柏さん、その生徒は……」

 普段は保健担当の馬橋先生がほんのちょっとそう言いかけ、そして頷く。

「うん、わかったわ。確かに戦力になるわね。じゃあ左側の前から3列目に座って」

 馬橋先生は招集した生徒を確認しているらしい。

 その間にもひっきりなしに生徒が入ってくる。


『戦況連絡、侵入容疑は4車両。主力部隊は神聖騎士団の原罪なき者13体。他に術者2、補助員2。現在西北西7.0キロメートル九王寺バイパス第2トンネル付近。

 次いで指令、Aブロックの児童生徒優先で保護開始。避難誘導要員は直ちに展開、夜ノ森先生の指示に従って活動を開始願います……』


「今のは?」

 聞き覚えがある声だ。厳密には声では無いけれど。

 確かクラスメイトの……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る