第27話 俺の死亡宣告?

 急に腕に重みがのしかかる。

 支えていた松戸が崩れ落ちそうになり、慌てて俺は力を入れ直した。

 操作完了で身体の指揮権が俺に戻ってきたらしい


 綾瀬は早くも魔法陣の前で、何か模様を描いたり消したり作業中。

 そして委員長が何故かおずおずとという感じでこっちにやってくる。


「佐貫君、大丈夫?」

 あれ、君付けになっているな。

 何故だろう。

 取り敢えず身体に特に違和感は感じられない。


「問題無さそうだな」

 そして率直な感想をひとつ。


「それにしても委員長凄いな、俺の身体であんな動きが出来るんだ。時間が遅くなったかに見えた」

「ん、あれが本来の佐貫君の実力よ。まだ上があるみたいだけれども」

 やっぱり委員長、微妙に態度が変だ。

 ん、まさか、ひょっとして……


「ごめん、もし俺を操作中に変な記憶を見せてしまったのなら謝る。確かにあの場はあれしか方法が無かったと思うけれど、それでも委員長としてはきっと不本意だったと思うし。お見苦しい物をお見せしまして……じゃなかった、まあ、その、とにかくすまん」

 何せ元中年ヒキニートだからな。

 最大限にひかれるような記憶はいくらでもある。

 ああ、ひょっとしたら終わったかも……


 でも委員長は何故か、驚いたような表情でこっちを見ている。

「え、佐貫君は私の事が嫌じゃ無いの?」

「なんで?」


「だって佐貫君の記憶を読んだかもしれないんだよ」

「だからそれについては重々謝る」

 俺は頭を下げつつ思う。

 何か微妙に話がかみ合っていない気が……


 あ、委員長が笑顔になった。

「ん、それなら佐貫、まあ今後とも宜しくね」

 呼称も元に戻った。

 よしよし。


「こちらこそ、これからも頼む」

 一応お互い頭を下げ合った。


「ん、綾瀬そっちはどんな感じ」

「大丈夫」

 綾瀬は魔法陣に何かを書き足しながら振り向かずに言う。

「これなら私にも理解できる。簡単な操作で戻せる」

「そう、よかった……」


「質問ひとついい?」

 今度は綾瀬が委員長に尋ねる。

「ん、何?」

「松戸さん、どうなるの?」


「ん、別にどうにも。まあこのまま気絶しているなら部屋まで連れて帰るけれど」

「何か罪がどうとかは」


「無いよ」

 委員長ははっきり言い切る。

「結局何もおこらなかった。結果はそれだけ。それでいいじゃない。それとも佐貫、何か文句ある?」

「いえいえそんな、めっそうもない」

 返答は冗談っぽく言ったが俺もそれでいいと思う。


 綾瀬が小さく頷いた。

「なら、いい」

「ん、それに思うんだ。

 ひょっとしたら私も同じような事をしたかもしれないなって。結果的にはやらなかったけれど」


「委員長なら式神いらないよな。単独で十分強すぎるから」

 あっ。しまった。

 委員長が必殺委員長チョップのモーションに入るのが見える。

 とっさに左に飛び、そして右腕を回して払う。

 身体が軽い。結果的にかなりの余裕を持って回避に成功。


「お、何か動きが良くなっている」

「ん、今の経験で少し制限が外れたのかな」

 委員長がにやりと不敵に笑い、両手の関節をボキボキと鳴らす。

「なら今後の訓練に手加減はいらないわね」

 おい、それ待った。

 俺の死亡宣告かよそれは!

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